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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

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  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

漫画「ののちゃん」に登場する玉野市電の廃線跡 2/2 [No.H077]

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玉駅跡に建つ休憩施設。備南鉄道として開業した2年後に延伸してできた新駅で、玉野市電となり路線延伸されるまでの終点。
玉野市電の廃線跡は、トンネルを3つ抜けると海沿いに出ます。そこから白砂川に沿って進むことになります。その白砂川の河口付近南側にあるのが三井造船玉野事業所です。廃線跡の一部は、この三井造船の敷地内にあるようですが、川に沿った部分はいまも自転車・歩行者専用道として使われていて、橋の下を見ると橋台・橋脚とも現役当時のものです。
この川沿いの一角が玉駅跡です。1953(昭和28)年に備南電鉄として初めて開業した際の終点でした。当初は3.5キロの営業区間を交換設備なしで開業したそうで、線内唯一の分岐は、玉駅近くにある車庫への分岐線だったそうです。いまは三井造船の敷地内となっている車庫ですが、一車体分程度の短い分岐線だったようです。
三井造船を過ぎたところで北へと方向が変わりますが、そこに玉駅跡があります。1955(昭和30)年に200m延伸してできた新駅で、開業と同時に当初の終点だった玉駅は、三井造船所前と駅名改称したそうです。現在、この新・玉駅跡には地元が建てた休憩施設があります。イベント時などに活用される施設のようです。


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白砂川の上を走っていた延伸区間。玉駅に近い側はT字型の橋脚だが、上流はこのように円錐形の橋脚だったようだ。

玉駅跡からは、白砂川沿いに市営玉駐車場が続いています。よくみると、駐車スペースの三分の二くらいがコンクリートで、三分の一くらいがアスファルトです。変だな?と思って対岸に回ってみると、コンクリート部分は川の上にせり出しています。このせり出した部分が、まさに玉野市電の廃線跡なのです。
備南電鉄が経営破綻したとき、玉野市が経営を引き継ぎましたが、その増収策として玉から1.0キロ玉遊園地まで延伸します。その延伸区間は、白砂川の左岸にせり出して造った長いコンクリート橋だったのです。1960(昭和35)年の延伸開業ですから、廃止となった1972(昭和47)年でもコンクリート橋の強度は十分なはずで、駐車場としてはとても強固な地盤だったわけです。いまもその橋脚が使われていますが、玉駅に近い側は見易いところに配管があるため、その様子が分かりにくい状態です。その上流で川幅が狭くなり、線路の一部が川にせり出していた部分の橋脚は容易に見られるので、その部分の写真を掲載します。


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高松琴平電鉄から里帰りした、もと玉野市電103号。外観・塗装とも晩年の姿だが、行き先表示板は「玉野市電103」となっている。
玉野市電の廃線跡は玉遊園地前までですが、遊園地といっても小さな公園で、特に見るべきものはありません。でも、そこから300mほど先にある「すこやかセンター」には、玉野市電ゆかりの電車が保存されています。開業当初に導入された3両のうちの1両で、モハ103号です。1964(昭和39)年に非電化線としたため不要となり、翌1965(昭和40)年に海を渡って高松琴平電気鉄道(通称・ことでん)にいきました。同鉄道では750形760号として活躍しました。他の2両も一緒に譲渡されたのですが、次第に廃車となり、2006(平成18)年まで残ったのがこの760号でした。
同車の晩年に、玉野市の有志が立ち上がって里帰り運動を展開し、廃車直後に引き取られて、現在地で静態保存されているものです。このため、銘板や車番は琴電時代のものでありながら、行き先表示は「玉野市電103」となっています。大切に保存されていることがよく判る状態で、毎月一回程度の割合で車内公開もされています。詳しくは、玉野市電保存会のサイトをご参照下さい。





掲載日:2014年02月28日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。