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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

江差線木古内~江差間の廃止が秒読み段階に… [No.H084]

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木古内から廃線区間に入った江差線の列車。背後には、建設が進む北海道新幹線の高架が見られ、その様は対照的だ。
JR北海道の江差線のうち、木古内~江差間42.1kmの運行最終日となる5月11日(日)まで、いよいよあと一ヶ月を切りました。この区間の廃線については、昨年8月2日付当コラムで
「鉄道で行くこだわり温泉-江差線湯ノ岱温泉」

としてご紹介しました。今回は、改めて同線の見どころをご紹介することで、これから乗ろうと思っていられる方の参考にしていただくとともに、廃止区間への惜別の一文といたします。
ところで、江差線でも五稜郭~木古内間34.8kmは特急「スーパー白鳥」や貨物列車が走る幹線ですから、廃止とは無縁… と思いがちですが、北海道新幹線が新函館まで延伸される予定の2016年3月には、並行在来線として北海道と沿線自治体が出資する第三セクター鉄道になることが決まっています。つまり、JR江差線は2年後までに全線が廃止される予定なのです。そのうち、木古内~江差間が先行して廃止されるというわけです。
その木古内を発車した列車は、津軽海峡線を左に見ながら江差に向かいます。津軽海峡線はいま新幹線対応工事の真っ最中です。ちょうど江差線から見えるあたりで3線軌条が終わり、新幹線と貨物列車用在来線が分岐します。


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終点間近の上ノ国~江差間では、日本海の絶景を眺められる。国道より一段高いところに線路があるため、眺めが良い。

木古内~江差間の廃線予定区間の多くは、渡島半島南西部にある松前半島を横断する峠越えの路線です。特に、木古内町から上ノ国町となる吉堀~神明間13.2kmは、峠越えとなるトンネルから神明駅まで並行する道道5号線が別ルートをとるため、線路の周りには鬱蒼とした森林だけという光景が展開されます。それだけに、雨上がりの新緑はまばゆいばかりの綺麗さだったのですが、今年は新緑が生えそろう前に列車が走らなくなりそうです。
峠越えをしたあとも、江差線は天の川に沿った谷筋を走ります。その途上、64キロポストのある湯ノ岱~宮越間には、天の川駅のホームがあります。…といっても、本物のホームではなく、地元有志が話題作りの活動で造ったホームもどきで、列車は停まらず通過します。注意深く車窓左手を眺めていると、一瞬ですがその存在が判りますよ。
単調な川沿いの景色に飽きがきた頃、突如、車窓左手に日本海が広がります。この景色が江差線最後のハイライトです。初めて乗車した方からは、わぁ~という歓声があがることもあるほどの絶景です。



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終点の江差駅。盲腸線の行き止まり駅だ。駅前には日本海が広がるものの、駅にいるとそのことが判らない。
日本海が見えなくなると、ほどなく終点の江差駅に到着します。久しぶりに建物がならぶ町にきた印象ですが、線路はこの駅で途切れています。いわゆる盲腸線で、車止めの先にはアパートが建っていて、この先に線路が延びることはありえないと主張している感じです。駅待合室はそこそこ広く、駅員もおいでになりますが、駅前は閑散としています。江差の町は、駅からさらに先に行ったところに広がっているうえ、国道は海岸沿いを走っているため、駅は町外れに寂しく佇んでいるような状態なのです。駅前には日本海が広がっているのですが、付近の建物の関係で駅にいると海も見えません。
ゴールデンウィークから廃止までは、各列車とも混雑すると予想されますので、駅前が閑散としている様子は感じられないかも知れません。しかし、その賑わいは、廃止へのはなむけと考えると良いのではないでしょうか。
JR北海道函館支社では、江差線の木古内~江差間廃止に向けて、関連のきっぷ類を販売していますので、最後にそのご紹介をします。
○さようなら江差線フリーパス 3,900円 函館~江差の江差線全線に2日間乗り放題
○さようなら江差線記念きっぷ
・江差駅限定 さようなら江差線普通乗車券 3,190円 5,000セット限定
・木古内駅限定 さようなら江差線普通乗車券 3,050円 5,000セット限定
・さようなら江差線硬券入場券10駅セット 1,700円 5,000組限定 発売…函館駅,木古内駅,江差駅



掲載日:2014年04月18日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。