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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

「あまちゃん」のロケ地、三陸鉄道をめぐる旅 2 [No.H097]

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三陸鉄道の撮影名所として知られる大沢橋梁を行くレトロ車両。この日は、海霧がひどくご覧の通りの光景に…
前回ご紹介した堀内駅から、国道45号線を宮古方向へ歩きます。さすがに二桁国道だけあって、歩道が十分な幅で整備されていて安全です。1kmほどいくと、大きな橋に出ました。堀内大橋というのですが、この海側に、三陸鉄道といえば…というほど知られる大沢橋梁があります。三陸鉄道は、北リアス線と南リアス線の2線からなっているのですが、どちらも期待するほど海は見えません。リアス式海岸という厳しい地形のため、海岸沿いに平地がないのです。そのため国鉄としての開通が断念され、第三セクターとして開通することになった経緯があります。それだけに、トンネルがとても多く、南リアス線にいたってはトンネルばかり…と観光客が嘆くほどの線形になっています。それが、東日本大震災で起きた津波での被害が全線に及ばずに済むことになり、南リアス線の列車は震災時にトンネル内で緊急停車して乗員乗客が全員無事だった結果にもつながっています。それだけに、海をバックにした撮影地は限られていて、この大沢橋梁が有名になるわけです。ちなみに、国道の歩道は山側にあるため、海側にある大沢橋梁を国道の橋の途中で撮影するのは危険です。橋を渡りきったところとドライブインの間に少し立つ場所があり、ここからの撮影になります。
この日は、朝から太平洋側が濃い海霧でした。堀内駅で下車したときには晴れていたのですが、大沢橋梁までくると、その海霧が沖からやってきてしまいました。それでも、海に面した港が見えますよね。ここは、「あまちゃん」で春子さんが東京に出る際、夏ばっぱが大漁旗を振っていたシーンを録ったところだそうです。大沢橋梁の上では三陸鉄道の列車が停車して、そんな案内もしてくれます。


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「あまちゃん」のラストシーンに登場した、トンネル出口にある白井海岸駅。秘境駅としても知られている。
大沢橋梁での撮影を終えて、さらに国道をすすみます。国道に登坂車線があるような上り坂で、カメラ一式を持っていることもあって、意外に体力がいります。2kmほど歩き、ようやく上り坂が終わったところで、左に折れる道があります。ここからセンターラインもない下り坂を800mほどすすむと、いきなり駅に出ます。トンネルとトンネルの間に造られた白井海岸駅です。海岸まで直線で200m弱、曲がりくねった道でも300m強の距離ですが、木々と山に囲まれて海は見えず、波の音も聞こえません。まわりに民家はなく、ただ沢を流れる水の音が聞こえるばかりの、とっても静かで落ち着いた駅です。牛山隆信氏がランキングして話題の「秘境駅」では、14位に入っています。
さて、ホームに行きましょう。傍らに待合室があり、その先はすぐにトンネルです。この光景をみて、「あっ!」と思う方は相当の「あまちゃん」ファンではないでしょうか。昨年半年間続いた同ドラマの最終回、主人公のアキと友人のユイが不通になっている北三陸鉄道のトンネルに入り、右カーブの線路を歩いて出たところに見えていたホーム、それが、ここ白井海岸駅のホームなのです。トンネル内からは、次のトンネルも見えていました。トンネル間にある白井海岸駅ならではの光景です。


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やがて、宮古側からやってきた定期列車。全線復旧の祝賀ヘッドマークがついている。
白井海岸駅の待合室には「駅ノート」という雑記帳が置いてあり、来駅者が思い思いのことを記しています。2005年3月からはじまったようで現在2冊目ですが、永らく、秘境駅として訪れたことが書かれています。それが、昨年後半から「あまちゃん」のラストシーンにでてきた駅ということが書かれるようになっていて、来駅者の関心が変化していることが読み取れます。列車が来るまで時間があるからと、この「駅ノート」をパラパラめくっていたとき、突然トンネル内から轟音が聞こえ、列車が通過していきました。団体列車でした。この記事の冒頭の写真に写っているレトロ車両も、団体列車でした。通常単行運転の定期列車も、日中は3両編成が見られますので、北リアス線は随分と賑わっているようです。
やがてやってきた列車に乗り、このあとも北リアス線を巡りましたが、どうやらこの堀内~白井海岸駅付近の車窓を楽しむために、バスツアーで北リアス線に乗るケースが多いようです。バスに乗り継げば、北限の海女の活躍の場である小袖海岸にも行けますし、内陸に入れば龍泉洞という知られた鍾乳洞もあります。龍泉洞の最寄り駅だった岩泉駅がある岩泉線は、廃線になってしまいましたし、北リアス線の南のターミナル宮古駅から南リアス線に接続していたJR山田線も不通になったままで、バス代行が続きます。それでも、これだけの観光客を集めている三陸鉄道北リアス線は、復興に向けて着実に歩を進めているようでした。



掲載日:2014年07月18日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。