日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「最南端の鉄道駅を訪ねる…指宿枕崎線・西大山駅」

[ ここから本文です ]

汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

最南端の鉄道駅を訪ねる…指宿枕崎線・西大山駅 [No.H111]

イメージ
クリックして拡大
ホーム端に「JR日本最南端の駅」の碑がある、JR九州指宿枕崎線の西大山駅。後方の開聞岳は雲のなか…
昨年8月16日付「日本最北端の線路は、駅を突き抜ける!?」では、日本の最北端駅である、JR北海道宗谷本線の稚内駅をご紹介しました。
最北端があれば最南端もあるはずですよね。ところが、その最南端の駅は2つあって、それぞれに言い分があります。まずは、誰もが最南端と思うのが、沖縄のゆいレール赤嶺駅。沖縄のモノレール駅で最南端に位置しますので、一般的にはここが最南端駅となります。ところが、沖縄都市モノレールは軌道法で造られています。つまり、路面電車と同じ分類なわけです。路面電車が停まるところは電停と呼んで、駅と区別されることもあります。
そうなると、正真正銘の日本最南端の「駅」は、JR九州の指宿枕崎線にある西大山(にしおおやま)駅となります。同駅は、薩摩富士とも呼ばれるきれいな裾野を持った開聞岳(かいもんだけ)を拝むことができる無人駅です。ゆいレールができるまでは、誰もが認める日本最南端駅として知られ、ホーム端にはその旨を示す碑がありました。ゆいレールができたあと、この碑はどうなるのかと思ったら、ご覧の通り最上部に「JR」の二文字を追加しました。これは素晴らしいアイデアです。JRとしては、間違いなく最南端なわけですから。



イメージ
クリックして拡大
ホームはきれいに整備され、「幸せの鐘」も設置されている。
西大山駅は、国鉄時代から「日本最南端の駅」碑がポツリと建つだけの、何ら飾り気がない無人駅でした。それが、この10年ほどで大変貌を遂げます。まずは、駅前すらもないようなところだったのが、きれいな舗装道路が駅前まで整備されます。並行して、駅前広場を設けて駐車場を造るだけでなく、花壇も整備しました。この結果、ご覧のとおり、華やかな面ももつ駅になりました。ただし、駅舎はありません。
写真の右奥には先にご紹介した「JR日本最南端の駅」碑があり、その先には、開聞岳の裾野が見えていますよね。晴れた日には、開聞岳がその全貌を見せてくれますし、春先にはホームの先に菜の花が咲き乱れて、開聞岳と見事なコントラストを見せてくれます。一昔前の西大山駅を知っている方でしたら、とても同じ駅とは思えないと驚かれることでしょう。



イメージ
クリックして拡大
駅前広場には人がウロウロ… 観光客相手の土産物店も開設されている。
さら驚くのが、駅前には観光客が歩き回り、土産物店までできていることです。西大山駅は利用者がいつもいなくて、あたり一面は畑以外になにもなかったはずですけど…
右の写真に写っている黄色いポストは、幸せの手紙を投函するためのものだそうです。その先にある土産物店は観光案内所も兼ねているのですが、ここで絵葉書を買って宛先等を記し、幸せの鐘を鳴らしてから投函すると、本当に幸せがやってくるのかも。
ちなみに、西大山駅にやってくる列車は、1日わずか8往復です。それも、指宿方面は5:44,7:06,8:29,9:00と早朝に4本やってくると、その次が14:18までありません。指宿からやってくる枕崎方面の列車も、6:26,7:31の次は11:46です。このため、8:29発と9:00発の少し前になると、指宿の温泉旅館から送迎バスやタクシーで次々と観光客がやってきては、この西大山駅から乗車していきます。ちょうどそのタイミングで同駅に行って、その賑わいを写したのが上の写真です。この日は2列車にツアー3つが乗り込んでいきましたが、そのうちの1つは、日本鉄道縦断ツアーでした。ここから乗り始め、列車を乗り継いで稚内まで行くのでしょうね。誰もがあこがれる、最南端から最北端を目指す汽車旅の出発点となる駅です。




掲載日:2014年10月24日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。