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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

動態保存の片上鉄道で、線路が延長されて新駅も開業 [No.H114]

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新設された黄福柵原駅で行われた落成式で行われた、テープカットの様子。
岡山県を走るJR赤穂線西片上駅の近くにある瀬戸内海の港から、かつて同和鉱業片上鉄道線が内陸部へと伸びていました。同線は、山陽本線和気駅を経て吉井川沿いに北上し、中国山中の柵原(やなはら)鉱山まで続く、33.8kmの路線でした。その終点だった柵原駅の一つ手前に、吉ヶ原(きちがはら)という駅がありました。この駅は、片上鉄道線が1991(平成3)年7月1日に廃止されたあと、片上鉄道保存会によって維持管理されてきました。そのため、いまも当時の車両が11両も保存され、そのうち8両が動態です。
運転線は約400mもある本格的なものですが、地元・美咲町がこのほど延伸を決めて、片上鉄道保存会の協力のもと、柵原寄りに約130m延長となりました。その延伸先には、新駅も建設されました。新駅は「黄福(こうふく)柵原駅」と名づけられ、去る11月2日に落成式が行われました。そのときのテープカットの様子が、右の写真です。新駅舎は片上鉄道線に多く見られた三角屋根をもったもので、現役時代を知っている筆者としては、片上鉄道らしい外観になったと嬉しく思うものです。



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レール締結式後、一番列車が黄福柵原駅に入線。ホームでは、国旗を振るひとびとが出迎えます。
駅舎の落成式に続いて、レール締結式も行われました。金色に塗ったレールジョイントを、代表者が金色のスパナで締め付けるとともに、金色の犬釘を金色のハンマーで枕木に打ち付けるというイベントです。その後、レール締結が完全に行われていることを確認したうえで、いよいよ一番列車が黄福柵原駅に入線です。
一番列車は、国鉄キハ07形のキハ702と国鉄キハ04形のキハ303の2連です。キハ702の前面には国旗が掲げられ、キハ303の側面には「ありがとう おかげさまで」という横断幕がつけられています。この編成は、片上鉄道線廃止時の最終列車と同じで、キハ303の横断幕はそのときの横断幕を模したものだそうです。なかなかこだわっていますよね。
その2両編成が黄福柵原駅に入線する際には、ホームで国旗を振るひとびとが出迎えていて、祝賀ムード満点となりました。
ちなみに、黄福柵原駅の"黄福"は、たまごかけご飯で知られる美咲町を象徴するたまごの黄身の黄色と、幸せを呼ぶといわれる黄色にちなんだもので、黄色で幸福をという意味の造語です。美咲町として、この"黄福"をキャッチフレーズにしたPR活動をしているようです。



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吉ヶ原駅を走るキハ702から、運転席越しに前方を見る。留置車両もあるだけに、現役当時の様子を彷彿とさせる。
今回、日本鉄道保存協会の総会が、この路線延伸に合わせて開催されました。筆者も同総会に参加していたおかげで、これらの写真を写せましたし、祝賀一番列車にも乗せていただくことができました。
全線で500m弱ですので、本格的に走るわけではありませんが、現役当時もさほど快速運転をしていたわけではないので、走りはじめると当時の雰囲気を思い出します。もっとも、現役時代は乗客がまばらだったのに対して、この祝賀列車は満席になるほどの乗客数でした。なかでも、吉ヶ原駅はホームが2面あり、車両も留置されているなど雰囲気満点で、走る列車内から眺める駅の様子は、現役当時を彷彿とさせてくれるものでした。
片上鉄道保存会は、毎月第一日曜日に保存車両の展示運転を行っています。乗車するには、300円で一日会員になるだけです。吉ヶ原駅と黄福柵原駅の改札で代金を支払うと、一日会員証となる硬券をいただけます。詳しくは、片上鉄道保存会のホームページをご参照下さい。




掲載日:2014年11月14日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。