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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

瀬戸内海を眺める、伊予鉄道・梅津寺駅ふきんを散策する [No.H117]

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伊予鉄道で車窓に海を眺められるのは、高浜線の梅津寺駅前後だけ。
愛媛県松山市の私鉄・伊予鉄道は、郊外線3本と路面電車の市内線をもっています。そのうち高浜線は、中心部に位置する松山市駅から高浜駅まで9.4kmの郊外線です。高浜駅では連絡バスが接続して、松山観光港まで行くことができます。つまり、通勤・通学路線であるとともに、船に連絡する路線でもあるわけです。
その高浜駅からは、梅津寺駅、港山駅、三津駅と海に関する駅名が4駅も続きます。実際、この高浜駅~三津駅間は地図で見ても海に近いところを走っているのですが、車窓から海が見えるのは梅津寺駅前後に限られています。それだけに、この付近の景色は貴重です。
梅津寺駅は海に面していますが、そこは彎曲した入江で、きれいな砂浜が続いています。電車を待つあいだに、犬を連れた方が砂浜を散歩する様子が見られました。



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梅津寺駅を見下ろす高台には、秋山好古(よしふる)の像が建つ。「坂の上の雲」の主人公の一人。
梅津寺駅から線路沿いに松山市駅方面へ進むと、200mほどのところに小高い山があります。その坂道を登ると、小説『坂の上の雲』の主人公、秋山真之(さねゆき)の銅像は左、秋山好古(よしふる)の銅像は右という案内看板があります。その右手すぐにある銅像・秋山好古は、秋山真之の兄で、日露戦争の際に大陸で騎兵隊を率いて大功を立てた人物です。その銅像からは、梅津寺駅と瀬戸内海を見渡すことができます。
一方、左手にいったところにある銅像・秋山真之は、日露戦争において東郷平八郎の作戦主任参謀として、バルチック艦隊を撃滅した大功を立てています。その秋山真之の親友であった正岡子規も加えた3人が、司馬遼太郎作の長編小説『坂の上の雲』の主人公となっています。
2009年の年末から毎年末に3年かけて放映されたNHKのテレビドラマ『坂の上の雲』は好評だったため、今年(2014年)10月から翌2015年3月末までの毎日曜日に、NHK-BSプレミアムで再放送されています。



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梅津寺公園に展示されている、鉄道記念物に指定の伊予鉄道1号機関車。坊っちゃん列車の本物だ。
『坂の上の雲』には、秋山真之・正岡子規の同窓生として、夏目金之助(後の漱石)も登場します。教師として松山に赴任した際のことも描かれているのです。
夏目漱石といえば、代表作として小説「坊っちゃん」が知られていますが、その「坊っちゃん」に出てくる"マッチ箱のような汽車"は、この高浜線を走っていました。当時の機関車と客車は、梅津寺駅前にある梅津寺公園に保存されていて、鉄道記念物にも指定されています。まさに、本物の坊っちゃん列車がいまも見られるわけです。
梅津寺公園は伊予鉄道直営の公園で、入園料はわずか50円です。木曜日が休園日となっています。なお、今秋は坊っちゃん列車の塗装し直しをしているため、12月下旬まで非公開となっています。見学に行くなら、新年になってからが良いでしょう。


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梅津寺駅ホームからは、海岸線に沈む夕日も見られる。沖を行く船は、三津浜港と広島県の柳井港を結ぶ防予フェリー。
梅津寺駅の周辺を散策して楽しんだら、松山市内に戻りましょう。改札を入ってホームのベンチに腰掛けて電車を待つあいだ、晴れた日の夕方であれば、海岸線に沈む夕陽が見られます。
この駅は、バブル時代に話題となったテレビドラマ「東京ラブストーリー」のエンディングのロケ地として知られています。「バイバイ カンチ」と書かれたハンカチといえば、同ドラマをご存知の方でしたら、ピンとくることでしょう。いまも、高浜方面へのホーム端に「東京ラブストーリー」ロケ地の案内板とともに、白いハンカチが結ばれています。




掲載日:2014年12月05日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。