日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「日本一の距離を運転体験できる“りくべつ鉄道”1/2」

[ ここから本文です ]

汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

日本一の距離を運転体験できる“りくべつ鉄道”1/2 [No.H144]

イメージ
クリックして拡大
りくべつ鉄道の拠点となる、旧ちほく高原鉄道の陸別駅に動態保存車両が待機している。現役時代からの跨線橋も健在。
「りくべつ鉄道」をご存知でしょうか?
北海道の中央やや東に位置する足寄郡陸別町にある鉄道ですが、鉄道ではありません…!?
官営鉄道として明治時代に開業した網走線陸別駅付近を、地元の商工会が主体となって有限会社銀河の森を立ち上げ、保存しているものです。ちなみに開業当初は、陸別駅の「陸」の字が三水偏でした。
網走線は後に国鉄池北線となったものの、1989(平成元)年に廃止となり、第三セクター鉄道「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」が運営を引き継ぎます。しかし、同線も2006(平成18)年で廃止となりました。そこで、陸別町商工会が一部区間の保存活動に乗り出したのです。
陸別駅には、国鉄池北線時代から線内の要となる車両基地があり、保守用車両も配置されていました。それだけに、広い構内となっています。その構内すべてを保存し、所属していた気動車のうち6両を動態保存にしたうえで、それらの車両を使って運転体験をはじめたのです。
その運転体験は、駅構内だけでなく、もとの本線上を1.6kmも走ることができる本格派です。もちろん、国内最長の運転体験区間です。そんなりくべつ鉄道を、ご紹介しましょう。


イメージ
クリックして拡大
左:各種機器がならぶ運転席。
右:運転席にある行路表も、りくべつ鉄道として作成した本格派。
りくべつ鉄道の拠点は、道の駅 オーロラタウン93内にあります。ちほく高原鉄道時代に陸別駅としてできた建物で、当時から道の駅となっていたほか、宿泊施設「オーロラハウス」も併設しています。
オーロラの名がついているのは、陸別町が「星空の街」に選定され、りくべつ宇宙地球科学館では115cmもの大型反射望遠鏡などを一般に開放しているほか、同所で名古屋大学と国立環境研究所がオーロラ等の研究をしていることに由来します。

その旧陸別駅の窓口に、りくべつ鉄道の窓口があります。ここで手続きをすることで、3種類の気動車運転体験をはじめ、動態保存車の乗車体験や、トロッコ乗車体験などができます。気動車運転体験では、本物の運転席に座り、左手でマスコンノッチ(車でいうアクセル)、右手でブレーキ弁を操作しつつ、前照灯の点灯・消灯や警笛を鳴らすなど、本物の運転士と同じ運転操作ができます。運転席右側にある行路表も、受講コースにあわせたものが用意されているなど、本格的です。


イメージ
クリックして拡大
受講者に渡されるマニュアル。旧本線を走る「Gコース」を経験するには、右の「Lコース」受講が条件となる。
さて、気動車運転体験は、まず「Lコース」を予約するのがお勧めです。
80分間かけて、指導運転士とマンツーマンでの運転体験です。一日4枠設定されていますが、その内容は次の通りです。
1)机上講習 10分
2)出区点検及び実車にて空気ブレーキ装置等講習 20分
3)指導運転士によるデモンストレーション 10分
4)体験運転 40分
駅構内は端から端まで500mもあります。そこを行ったり来たりする体験運転となります。
料金は2万円とやや高めですが、それだけの価値がある内容です。
その「Lコース」受講者だけに許されるのが、旧本線上を1.6km運転することができる「G(銀河)コース」です。こちらも80分間かけてのマンツーマン運転体験で、やはり一日4枠が設定されています。そのスケジュールは次の通りです。
1)机上講習 10分
2)陸別駅構内にて復習運転 30分
3)本線上にて体験運転 40分

こちらは料金3万円とさらに高くなりますが、なにせ1.6kmも本線上を運転できるのは、ここりくべつ鉄道だけです。
なお、未経験者でも1泊2日でLコースに続けてGコースを受講することができますが、その場合、前述のオーロラハウスで宿泊すると、1泊2食の宿泊費が無料となる特典があります。
他のコースも含めて、実施日や時間が決められていますので、費用とともに、詳しくはりくべつ鉄道のホームページをご覧下さい。

つづく


掲載日:2015年06月26日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。