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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

旧白滝駅、下白滝駅も廃止候補の報道が… [No.H149]

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白滝4駅中、もっとも利用者が多い白滝駅は、特急も停車するホーム2面に3線を有する駅。駅舎も凝った意匠だ。
前回、列車が一日に上下各1本しか停まらない、上白滝駅を紹介しました。
その下り方…つまり、北見・網走方面には、白滝駅・旧白滝駅・下白滝駅と、「白滝」の名が付く駅が続きます。実は、以前、上川駅~上白滝駅間に奥白滝駅があったので、その頃は5駅連続して「白滝」の名が付く駅でした。しかし、奥白滝駅は利用者がいないことから、いま信号場となっています。
石北本線と並行して湧別川が流れているのですが、下白滝駅から500メートルあまり旧白滝駅寄りのところで滝となっていて、その水しぶきが飛び散る様から「白滝」と呼ばれていたそうです。その白滝は大正時代の豪雨で以前の姿でなくなったものの、地名としては残り、昭和21年に開村するに際して「白滝村」と名づけたということです。
その一連の「白滝シリーズ」のなかで、最も利用者が多いのが、白滝駅です。駅は上の写真のようにホーム2面に線路が3本あり、列車交換ばかりか、折り返しも可能となっています。特別快速「きたみ」はもとより、特急「オホーツク」も1日2往復停車する、この地域の核となる駅です。駅近くには郵便局・小学校・中学校・町役場支所もあります。町役場“支所”となっているのは、白滝村が遠軽町・生田原町・丸瀬布町と合併して遠軽町となったためです。
昭和4年8月12日に、後ほど紹介する下白滝駅とともに開業していますので、今年で開駅85年となります。


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旧白滝駅に進入してきた下り列車。唯一停車する下り列車で、上白滝駅で唯一の下り列車と同じ列車だ。
白滝駅から6.1kmで旧白滝駅に着きます。この地域で最初に開拓された地であるものの、いまでは白滝駅あたりが村の中心となっているため、旧白滝という地名がつき、駅名もその地名にあわせたものとなりました。
国鉄時代は仮乗降場だったのですが、JR北海道発足と同時に駅となりました。仮乗降場とは簡易駅のような存在で、運賃を決めるため営業キロもありませんでした。つまり、利用者の便宜のために乗降ができる簡易な設備を設けて、列車も停車するものの、乗車券は一つ先の駅まで(駅から)の運賃を支払うというものでした。国鉄時代は北海道に多くあったのですが、いまは存在しません。
その仮乗降場ではじまった旧白滝駅は、ご覧の通り素朴な駅です。それでも、待合室があるのは、さすがに厳冬となる地だからでしょう。ホーム上には、白い花が咲き乱れていました。


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旧白滝駅の待合室内掲示物。発車時刻表は、下り1本、上り3本の、上下合わせて一日計4本だけ。
右の写真は、旧白滝駅のホームに建つ待合室内にあった掲示物です。右上の「きっぷ運賃表」で、白滝シリーズ各駅の位置関係を再確認していただけるものと思います。その左側にある「発車時刻表」をみると、下りは7:16の1本だけ。上りは14:08,16:53,20:05の3本です。このうち14:08,20:05の2本は、隣の白滝駅が終点です。残る1往復は、上白川駅に唯一停まる列車です。
ところで、前回の当コラムでは、JR北海道が示した無人駅数十を廃止する対象として、上白滝駅が含まれる可能性が極めて高いと記しました。その後、地元新聞の報道で、上白滝駅とともに、この旧白滝駅、それに次に紹介する下白滝駅も廃止対象と報じられました。
その報道では、旧白滝駅の利用者がいま高校生一人だけで、その高校生が他の利用者を見たことがないことも報じています。これも日本なの? と思ってしまう話ですよね…
このJR北海道の方針が来春予定通り実行されると、白滝シリーズで残るのは白滝駅だけとなります。そのとき、上川~白滝間37.3km、白滝~丸瀬布間19.7kmが隣接駅までの距離となりますから、合わせて57.0kmの間に1駅だけという状態となります。


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下白滝駅は、上下交換ができる駅で、除雪車用と思われる側線もある立派な駅。でも利用者がいなく、廃止の予定。
旧白滝駅から4.4kmで下白滝駅です。白滝の下流にあるから下白滝と、判りやすいです。白滝駅と同じく昭和4年8月12日に開業した、今年で開駅85年の駅です。
並行する国道から150mほど入ったところにあり、漫然と国道を車で走っていると、その存在すら気付きません。というのも、駅前に通じる道の入口付近に大きな農家が一軒あるだけで、それ以外の家はまったくないのです。
それだけに、駅にいても誰も来ません。やってきた列車も、単にホームに停車しているだけで、やがて時刻になると何事もなかったかのように発車していきます。広大な構内に交換設備もある立派な駅ですが、もはや旅客駅としての価値は失っているようです。

このような状況をみてきただけに、上白滝駅・旧白滝駅・下白滝駅が来春廃止されると報道されても、頷くしかありませんでした。こんな北海道ならではの無人駅が続く様子も、みるなら今がそのラストチャンスのようです。

【おしらせ】
※豪雨による路盤流出のため、上川~白滝~遠軽間は8月1日から長期運休となっています。
同地へ行くことを予定されている方は、JR北海道のホームページで最新情報をご確認下さい。


掲載日:2015年07月31日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。