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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

一日に、上下各1本しか列車が停まらない上白滝駅 [No.H148]

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上白滝駅にやってきた、同駅で乗降できる唯一の下り列車。午前7時4分発網走行。
鉄道の旅客駅は、列車が停まって旅客が乗降するためにあります。当たり前のことですよね。
その駅に停まる列車が、一日に一本しかない…そんな駅が、北海道にあるのをご存知でしょうか。石北本線上白滝(かみしらたき)駅です。右の写真は、その唯一の下り列車である、午前7時4分発が入線してきたところです。
始発は隣の上川駅ですけど、上川駅~上白滝駅間は34.0kmもあります。山手線一周が34.5kmですので、山手線をグルッと一周する距離に、駅が一つもないということになります。ちなみに、上川駅発は6時16分ですから、上白滝駅発までに48分間かかっています。この駅間で文化圏が変わるわけですが、それにしてもさすがに北海道だけあってスケールが大きいですよね。


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上白滝駅の「発車時刻表」。下りは7時4分発網走行、上りは17時8分発旭川行と、それぞれ各1本だけ。
左の写真は、上白滝駅の駅舎にある「発車時刻表」です。
ご覧の通り、下りは7時4分発網走行、上りは17時8分発旭川行があるだけです。右下に「凡例」がありますが、わざわざ凡例を提示しないで、直接各列車に注釈を記しても十分なほどの余白があります。
なお、通過列車は、特急「オホーツク」が上下各4本と、特別快速「きたみ」が上下1本の、5往復10本あります。












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自然にもどりそうなホームながら、乗降場所はしっかりと除草してあり、安全が保たれている。
唯一の下り列車が停車したものの、乗降客は誰もいません…
念のため、6月中旬の日曜日と月曜日の2日つづけて訪問したのですが、いずれも乗降客ゼロでした。
こんな状況ですから、もちろん無人駅です。でも、待合室はきれいに清掃されていますし、ホームも乗降場所はしっかりと除草されていて、利用者の安全が保たれています。それでも、駅舎とホームの間にはタンポポをはじめとした草花が…
待合室には駅ノートが置いてありますが、多く書かれているのは、いかにしてこの駅を利用したかということ。駅だから利用できるのは当たり前…ではなく、ここは下車したら最後、次の列車を待つにはあまりに時間がありすぎます。ここを解決しておかないと、いざ下車したのは良いものの、続いて途方に暮れてしまいかねません。
さて、利用者はどうしているのかと思ったら、隣駅である白滝駅まで3.3キロを歩くケースが多いようです。幸い、線路に並行して国道がありますので、積雪のない時期であれば安全に歩けます。白滝駅は同駅で折り返す普通列車がありますし、特急も1日2往復が停車しますので、上下どちら方向へ行くにしても、3.3キロ歩けば大丈夫ということのようです。
先ほどからしばし停車していた下り列車は、エンジン音も高らかに発車していきました。


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去りゆく列車の左手には、自生しているルピナスの花が満開になっていた。
去りゆく列車を見送ると、上白滝駅ホームの反対側には、ルピナスが咲き乱れていました。もともとはすれ違うためのレールが敷かれていた場所で、自生しているのでしょう。6月の北海道らしい光景です。

ところで、7月になって北海道新聞は、JR北海道が来春に数十の無人駅を廃止する方針だと報道しています。同紙からは、上白滝駅の下り方向にある金華(かねはな)駅の廃止と留辺蘂(るべしべ)駅の無人化を北見市に伝えたことが判明しています。また、7月17日の記者会見で、JR北海道の島田社長が室蘭本線の秘境駅として知られる小幌駅の廃止に言及したことも記されています。しかし、廃止対象駅の全容はいまのところ非公開です。
数十もの駅を廃止するとなると、この上白滝駅がそこに含まれる可能性は極めて高いことが予想されるだけに、訪問するなら、この夏から秋にかけてがラストチャンスとなるかも知れません。
同様な駅が上白滝駅の下り方に続きますので、次回はそれらの駅についてご紹介します。


掲載日:2015年07月24日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。