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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

年間わずか2日しか営業しない 津島ノ宮駅 [No.H152]

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「日本一営業日が短い駅」と書かれた、津島ノ宮駅の駅名標。その右肩には100周年の記念マークも描かれている。
鉄道の駅は、年中いつ行っても営業しているものと思いがちですが、なかには営業日が限られている駅もあります。よく知られているのは、上越新幹線が冬季だけ乗り入れるガーラ湯沢駅でしょう。スキー場が開設されているときだけ営業する駅です。
同じように、梅の開花シーズンだけ営業する常磐線の偕楽園駅のような例もあります。
そのなかで、営業日数が最短なのは、四国の予讃線にある津島ノ宮駅で、わずか2日間だけの営業です。香川県の海岸寺駅~詫間駅間にある臨時駅で、毎年8月4日と5日だけ、近くの津嶋神社の夏季例大祭が開かれるのにあわせて営業します。
臨時駅ではありますが、今年で開駅100周年という歴史ある駅です。余談ながら、今年は開駅日である5月7日に近い5月10日(日)に開業100周年記念式典が行われ、この日に営業をしたので、年間営業日は3日間でした。例年より5割も長くなりましたが、それでも、ダントツで日本一短い営業日数です。


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100周年記念で8月4日に停車した、アンパンマントロッコ列車。この日は、ミステリートレインも停車した。
左の写真は、JR四国が運行するアンパンマントロッコ列車が、津島ノ宮駅を発車したところです。津島ノ宮駅の営業初日となる8月4日に、JR四国が同駅100周年記念として「アンパンマントロッコ列車でゆく津嶋神社」と「親子de楽しむ!鉄道ミステリーツアー」という2つの津島ノ宮駅にいく鉄道ツアーを、高松駅発着で企画したのです。
津嶋神社はこどもの守り神で、海岸から250m沖合にある本殿まで、赤い橋を渡っていくと子ども・若いカップル・夫婦に幸せが訪れるとされているそうです。本殿では、多くの子どもが拝殿に上がり、次々と祈祷を受けていました。
ところで、写真の踏切は何か変だと思いませんか? 遮断機ではなく、タイガーロープで通行者を遮断しているのです。係の方が傍らに立っていますが、この方が、警報機が鳴り出すとロープを張り、列車が通過するとまたロープを外しています。このとっても微笑ましいロープ遮断機も、津島ノ宮駅が営業する2日間だけ、特別に見られるものです。
なお、写真の右側に写っている葭簀(よしず)をかけてあるところは、以前の改札口で、いまは通行止の札がかかっています。


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臨時駅ながら、しっかりとした駅舎と広いホームがある。写真右端がいまの改札口。
年間わずか2日しか営業しない津島ノ宮駅ですが、ホームだけでなく、駅舎もちゃんとあります。決して豪華な駅舎ではありませんが、強い陽射しを避けてきっぷを売るには、十分な大きさの建物です。
駅が開設された頃には、手荷物の扱いもしていた駅舎ですから、それなりの大きさが必要だったのでしょう。最初の写真にあるように、この2日間だけは大勢の駅員がこの駅に駆けつけて、列車の乗降が安全かつ円滑に進むようにしていますが、その方々の休憩所にもなっています。
きっぷうりばから見て、ホームは駅舎の反対側になるほど、駅構内の奥行きがあります。その構内のホーム反対側にテントを掛け、中にパイプ椅子を並べて仮設待合室としています。暑い時期ですので、大きな業務用扇風機が回っているほか、飲料水なども構内で販売しています。
特急列車を除く予讃線の全列車が停車しますので、日中でも1時間に片道1-2本の列車本数があります。それだけに、激混みとなることはなく、かといって閑散としているわけでもなく、なかなか良い雰囲気の臨時駅でした。
次の営業は来年8月となります。曜日に関係なく毎年4-5日に開設される駅ですので、利用するのは至難ですが、都合がつくようなら、いちど降り立ってみるのも一興かと思います。


掲載日:2015年08月21日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。