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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

トワイライトExpの食堂車記録本を発刊 [No.H157]

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「トワイライトエクスプレス」食堂車 ダイナープレヤデスの輝き の表紙
大阪~札幌間を日本海に沿って結んでいた、豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」は、今年3月のダイヤ改正で定期運行を終了しました。1989年から四半世紀あまりにわたって走り続けた同列車は、国内最長距離を走る旅客列車でしたが、登場以来、人気列車の上位に常にランクされる列車でもありました。
その列車の存在価値を大きく高めていたのが、食堂車「ダイナープレヤデス」の存在でした。「ダイナープレヤデス」はフレンチレストランです。それも、専属のクルーが乗り込んで、車内で調理した料理を提供するという本格派です。
いまや、豪華クルーズトレインであっても、食堂車とは名ばかりの、積み込んだ料理を温めて提供する列車ばかりとなっています。そのなかで、唯一、車内での調理にこだわり続けた食堂車なのです。
特にディナーはフルコースのフレンチで、もっとも力を入れた内容となっていました。それも、全28席を一日2回転。さらに上り列車と下り列車があるので、最大で一日に112名もが利用する、国内最大のフレンチレストランでもありました。

そんなダイナープレヤデスに焦点を充てつつ、トワイライトエクスプレスという伝説に残るであろう寝台列車の「栄光の軌跡」と「最終列車の記録」をまとめた書を、このたび刊行致しました。


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最終2年間のディナーメニューと写真をすべて収録
ダイナープレヤデスのクルーは、料理を創る厨房と、車内サービスを提供するホールに大きく分かれています。その統括はホールマネージャーが担当しますが、列車の運行を担当する運転士さん、車掌さんらとは別組織になっています。A寝台車の乗客に対する車内サービスや、車内販売もホールが担当しています。
そこには当然、それぞれの人間としての葛藤があり、最終列車に向けてのドラマもありました。そんな、これまで一般には知られていない事柄も収録しています。特に、最終列車が走る直前の2日間は、天候が悪くて運休が続いたため、直前に札幌に到着したクルーたちは現地で足止めとなり、トワイライト営業センターからの食材の補給もできないなかで、いかに奮闘したかも記してあります。
また、評判の高かったディナーメニューについては、最後の2年間の全メニューを写真とともに掲載しています。そのうえで、最終1年間のメニュー作りを任された料理長の、メニュー作りに対する思いや創作過程についても記しました。
これらのメニューは、貴重な記録としても同書で残せたものと思います。


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5月から走りはじめた「特別なトワイライトエクスプレス」についても収録。
人気が高いだけに、惜しまれながら引退した「トワイライトエクスプレス」ですが、その後、編成を組み換えて5月から「特別なトワイライトエクスプレス」として運転しています。
全3編成6両あったA個室寝台車から4両を抜き取り、ダイナープレヤデスとサロンカー「サロン・デュ・ノール」を加えた6両に、スタッフ用の寝台車1両と電源車1両を連結した8両編成です。
A個室寝台車は1両に「スイート」1室と「ロイヤル」4室だけですので、計20室で定員はわずかに40名です。この編成は、クルーズ・トレインという、日本旅行などの旅行会社がツアーで販売する列車になりました。このため、「みどりの窓口」では売っていません。
この「特別なトワイライトエクスプレス」についても、最終章で取りあげました。定期運行をしていた頃より、さらにダイナープレヤデスの存在価値が高まった列車で、もちろん、グレードアップしたその初回メニューも収録しています。

トワイライトエクスプレスに思い入れのある方はもちろんのこと、同列車に乗ることができなかった方、「特別なトワイライトエクスプレス」に乗車しようかと考えている方々も、ぜひ書店で一度、拙書をお手にとってご覧下さい。
いま話題のクルーズトレインへの道を開いた列車の記録本として、その価値を感じていただければ幸いです。

「トワイライトエクスプレス」食堂車
ダイナープレヤデスの輝き
-栄光の軌跡と最終列車の記録-

伊藤 博康 著 / 創元社刊 定価(本体1,500円+税)



掲載日:2015年10月02日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。