日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「えちぜん鉄道福井駅が新幹線高架に仮駅を開業」

[ ここから本文です ]

汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

えちぜん鉄道福井駅が新幹線高架に仮駅を開業 [No.H159]

イメージ
クリックして拡大
北陸新幹線福井駅の高架部分に仮駅を開業した、えちぜん鉄道福井駅。遠くから見ると、まるで天空の駅だ。
北陸新幹線は、今年3月に長野から金沢まで延伸されました。このさき大阪まで延伸する計画の北陸新幹線ですが、いまのところ敦賀までの開業が決まっています。その途中にある福井駅部分は、在来線に並行した新幹線高架が、もう完成しました。在来線駅の高架化や、駅周辺の再開発を絡めた総合事業の一環として進めてきた結果です。
一方、約1.5キロにわたって並行するえちぜん鉄道は地上のままで、一時は高架化を断念しました。しかし、同線があると、福井市内が東西に分断されたままの状態は変わらないとして、福井市はえちぜん鉄道も高架化することを決めました。
ところが、高架化する用地がありません…そこで、先行して工事が進んでいた新幹線高架を一時的にえちぜん鉄道が使うことにしました。その、将来新幹線福井駅となる部分に、去る9月27日、えちぜん鉄道の福井駅が開業しました。
高架は、いずれ敦賀方に延伸工事をするため、端部がいきなり途切れた形となっています。そのため、えちぜん鉄道福井駅を少し遠くからみると、右上の写真のように、まるで天空の駅のように見えます。


イメージ
クリックして拡大
線路の両端が雪捨て場となっている高架を進む、えちぜん鉄道の列車。左奥のカーブした先が福井駅。
福井駅から次の新福井駅までの500メートルは、複線となっています。新幹線用の高架だけに、線路敷きの両端は雪捨て用の深い溝がある構造です。
左の写真は新福井駅のホームで撮ったものですが、線路部分だけが高くなっていることが分かるでしょう。この新福井駅は、福井方面の上りホームだけに階段とエスカレーターがあるため、下りホームへ行くために、なんと構内踏切が新設されました。構内踏切ですから、踏切道は線路の高さになります。つまり、いずれは近付くことができなくなる北陸新幹線の高架上を、誰もが歩いて横切り、その高架の状態を見学できるのです。これも、えちぜん鉄道の高架が完成するまでの期間限定の特権です。
その線路敷きを見ると、採石を敷き詰めてコンクリート枕木を使っていることが判ります。新幹線の軌道はコンクリート製になると思われますので、撤去しやすい構造として、昔ながらの採石と枕木による構造にしたものと思われます。


イメージ
クリックして拡大
新幹線高架上から地上線へと下る仮設線路を走る、えちぜん鉄道の列車。左下は、今後高架になる予定の旧線。
新福井駅を出ると、少し先で単線となります。単線になるとすぐに新幹線の高架は終わり、ここから仮設の線路を下って、地上にある福井口に到達します。新福井~福井口間の距離は、1.0キロです。
この福井口は地上にあるものの、以前の駅から移転した仮駅です。並行して、先月まで使っていた線路がありますが、10月初旬の段階で、すでに架線は外されていました。今後、電化柱を外し、レールと枕木を撤去したうえで、高架化工事が始まるものと思われます。

わずか1キロ程度とはいえ、新幹線用の高架上を第三セクター鉄道の電車が1-2両で走るのは、なかなかユーモラスです。整備新幹線としては初めてのことで、旧国鉄でも本格的に開業前の高架上を並行私鉄が走ったのは、東海道新幹線開業前に京都~新大阪間で阪急京都線が大山崎~上牧付近を走って以来となろうかと思います。
いま、北陸新幹線を2020年に福井駅まで前倒し開業しようという話が出ています。これを実現するには、えちぜん鉄道の高架化がそれ以前にできている必要があります。となると、この光景がみられるのはさほど長くないことが予想されます。
新幹線高架を走るえちぜん鉄道…その貴重な光景を、ぜひ一度見て、乗ってみて下さい。


掲載日:2015年10月16日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。