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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
北海道初の電車711系を保存している「大地のテラス」 [No.H166]
日本の鉄道は、どこでもたいてい蒸気機関車ではじまり、その後、都市部を中心に電車が投入されました。さらにディーゼルエンジンの発達で、非電化線にはディーゼルカーが普及していきます。
北海道も同じく蒸気機関車ではじまり、その後、札幌市内に市電が走りはじめるというところまでは同じでした。しかし、札幌圏で定山渓鉄道が電車を走らせたものの、国鉄線の電化は実現しないままとなっていました。
ようやく北海道の国鉄線に電車が登場したのは、もはや戦後も終わり、高度経済成長の時代になっていた昭和42(1967)年のことでした。その最初の電車は、711系試作車2両編成2本の計4両です。その後、電化区間の拡大とともに711系の増備が続き、特急形電車も走るようになっていきました。
その俊足は、急行「さちかぜ」として札幌~旭川間をノンストップ走ると、同区間を走るディーゼル特急よりも速いほどでした。
その711系は登場から半世紀近くなり、次第に数を減らしていましたが、ついに今年(2015年)3月13日の運行を最後に全廃となりました。
その711系のうち2両が、その後、岩見沢郊外にある人気レストラン「大地のテラス」に保存されました。右上の写真が、その保存された711系先頭車2両です。
711系が保存されているのは、現地で農業法人を立ち上げ、“南空知グリーンツーリズム”を日本旅行と一緒に手掛けている道下産地が所有する土地の一部です。
同保存車から農地を挟んだところにファームレストラン「大地のテラス」があります。地産地消のおいしい農産物を提供する店として、今年7月20日のオープン以来、昼時に行くと順番待ちになるほどの人気店となっています。
実際、採れたての野菜やこだわりの米を使って炊いた御飯など、ランチビュッフェの品はどれもが美味しくて、筆者もついつい食べすぎてしまったほどです。
その食事中に、ふと見上げると、711系が見えるのです。良い環境でしょ? 箸休めに711系を見れば、さらに食欲も増そうというものです。(笑)
大地のテラス
北海道岩見沢市栗沢町上幌2203番地
TEL:0126-33-2020 [火曜日定休]
ランチ 11:00~15:30(最終入店14:00)
ディナー18:00~21:00(最終入店19:00)
この711系の保存には、前述の農業法人・道下産地と組んでいる日本旅行側の担当・永山茂さんが大きく関わっています。
永山さんは、この汽車旅ひろばを開設している日本旅行鉄道プロジェクトの一員でもあり、かつ、北海道鉄道観光資源研究会という、道内の鉄道を観光資源に活用していこうと活動している会の代表でもあられます。
もともと、国鉄蒸気機関車の末期に、蒸気機関車を撮るために何度も渡道して北海道の魅力を知ったという京都市出身の方です。日本旅行に就職された際に、希望就職地として記した北海道に希望通り配属され、それから約35年間札幌を中心に活動されているそうです。
こんな経緯から、711系全廃の報にはどこかで保存されるのだろうと思っていたとのことですが、実際には保存予定がなく、道民の711系に対する気持ちも分かり、何とかできないかと考えたそうです。
その際、話題になり始めていたクラウドファンディングの活用を思いつき、さっそく、国内最大のクラウドファンディング「READY FOR?」に、
47年間愛されて引退した北海道初の電車「赤電」を残したい!
を登録し、3月25日~4月14日の約3週間にわたって、募金をしました。
どれだけお金が集まるか半信半疑だったということですが、開けてみると、毎日続々と申込みがあり、79時間後の3月28日午前には、目標の234万円を達成。さらにその後も増え続け、期間終了までには、なんと412万9千円も集まりました。
この費用を当初目標の輸送費にくわえて、今後の保守費にも充当することとして搬入。8月7-9日に公開イベント「赤い電車まつり」を開いたうえで、8月10日からレストラン営業日の10-17時に車内公開をしています。
ランチに来た方が、満席で順番待ちになった際、この711系が待合室になるという予想外の活用方法もされているということです。
レストラン横の直営売店には、711系グッズも売っています。
車がないとアクセスしづらい場所ですが、北海道旅行の際に、おいしい食事を食べがてら、一度立ち寄ってみられることをお勧めします。
掲載日:2015年12月04日
北海道も同じく蒸気機関車ではじまり、その後、札幌市内に市電が走りはじめるというところまでは同じでした。しかし、札幌圏で定山渓鉄道が電車を走らせたものの、国鉄線の電化は実現しないままとなっていました。
ようやく北海道の国鉄線に電車が登場したのは、もはや戦後も終わり、高度経済成長の時代になっていた昭和42(1967)年のことでした。その最初の電車は、711系試作車2両編成2本の計4両です。その後、電化区間の拡大とともに711系の増備が続き、特急形電車も走るようになっていきました。
その俊足は、急行「さちかぜ」として札幌~旭川間をノンストップ走ると、同区間を走るディーゼル特急よりも速いほどでした。
その711系は登場から半世紀近くなり、次第に数を減らしていましたが、ついに今年(2015年)3月13日の運行を最後に全廃となりました。
その711系のうち2両が、その後、岩見沢郊外にある人気レストラン「大地のテラス」に保存されました。右上の写真が、その保存された711系先頭車2両です。
711系が保存されているのは、現地で農業法人を立ち上げ、“南空知グリーンツーリズム”を日本旅行と一緒に手掛けている道下産地が所有する土地の一部です。
同保存車から農地を挟んだところにファームレストラン「大地のテラス」があります。地産地消のおいしい農産物を提供する店として、今年7月20日のオープン以来、昼時に行くと順番待ちになるほどの人気店となっています。
実際、採れたての野菜やこだわりの米を使って炊いた御飯など、ランチビュッフェの品はどれもが美味しくて、筆者もついつい食べすぎてしまったほどです。
その食事中に、ふと見上げると、711系が見えるのです。良い環境でしょ? 箸休めに711系を見れば、さらに食欲も増そうというものです。(笑)
大地のテラス
北海道岩見沢市栗沢町上幌2203番地
TEL:0126-33-2020 [火曜日定休]
ランチ 11:00~15:30(最終入店14:00)
ディナー18:00~21:00(最終入店19:00)
この711系の保存には、前述の農業法人・道下産地と組んでいる日本旅行側の担当・永山茂さんが大きく関わっています。
永山さんは、この汽車旅ひろばを開設している日本旅行鉄道プロジェクトの一員でもあり、かつ、北海道鉄道観光資源研究会という、道内の鉄道を観光資源に活用していこうと活動している会の代表でもあられます。
もともと、国鉄蒸気機関車の末期に、蒸気機関車を撮るために何度も渡道して北海道の魅力を知ったという京都市出身の方です。日本旅行に就職された際に、希望就職地として記した北海道に希望通り配属され、それから約35年間札幌を中心に活動されているそうです。
こんな経緯から、711系全廃の報にはどこかで保存されるのだろうと思っていたとのことですが、実際には保存予定がなく、道民の711系に対する気持ちも分かり、何とかできないかと考えたそうです。
その際、話題になり始めていたクラウドファンディングの活用を思いつき、さっそく、国内最大のクラウドファンディング「READY FOR?」に、
47年間愛されて引退した北海道初の電車「赤電」を残したい!
を登録し、3月25日~4月14日の約3週間にわたって、募金をしました。
どれだけお金が集まるか半信半疑だったということですが、開けてみると、毎日続々と申込みがあり、79時間後の3月28日午前には、目標の234万円を達成。さらにその後も増え続け、期間終了までには、なんと412万9千円も集まりました。
この費用を当初目標の輸送費にくわえて、今後の保守費にも充当することとして搬入。8月7-9日に公開イベント「赤い電車まつり」を開いたうえで、8月10日からレストラン営業日の10-17時に車内公開をしています。
ランチに来た方が、満席で順番待ちになった際、この711系が待合室になるという予想外の活用方法もされているということです。
レストラン横の直営売店には、711系グッズも売っています。
車がないとアクセスしづらい場所ですが、北海道旅行の際に、おいしい食事を食べがてら、一度立ち寄ってみられることをお勧めします。
掲載日:2015年12月04日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。