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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

仙台市営地下鉄に2本目の東西線が開業 [No.H169]

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12月6日に開業した仙台市営地下鉄東西線。起伏の激しい区間を走るため、このように地上を走る姿も見られる。
仙台市には、これまで地下鉄南北線がありました。
そこへ、12月6日に東西線が2本目の地下鉄として開業しました。
南北線とは仙台駅で直角に交わる路線で、仙台駅を起点に、仙台市の東西南北に地下鉄網が広がったことになります。

今回開業した東西線は、太平洋に近い荒井駅から東側の丘陵地にある八木山動物公園駅までの14. 0kmで、仙台駅がそのほぼ中央に位置しています。
全部で13駅ですから、平均駅間距離は約1. 17kmです。
その東側半分は、比較的平坦な土地です。ただし、仙台東部道路のすぐ西側に位置するため、東日本大震災では、この道路の築堤が津波をさえぎってくれて難を逃れたところだということです。

一方、仙台駅から西側は起伏の激しい地形となっています。
仙台の中心街を抜けたところに広瀬川が流れていますが、この川を橋梁で渡ります。
ところが、明かり区間は橋梁上だけ。渡り終えてすぐにある国際センター駅は、もう地下にあります。
ちなみに、広瀬川は青葉城の外堀を兼ねている川で、国際センター駅から青葉城までは1キロ弱の距離となります。


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「祝開業」のステッカーが貼られている、東西線の車両。全駅ホームドアを設置し、バリアフリー対応となっている。
東西線はレールの上を走っていますが、リニア駆動モーターを採用しています。
大阪市の長堀鶴見緑地線が最初に採用し、その後、都営大江戸線や横浜市グリーンラインなどでも採用されている方式です。
一般に電気モーターは、一次側コイルのなかに二次側回転子があります。
その二次側回転子を、リアクションプレートと呼ばれる直線状(リニア)の代替品にしてレールとレールの間に敷きます。その直上に、車両床下の一次側コイルを位置させることで動くようにしたものです。
ちょっと話が難しくなりましたが、要はモーターの一部がレール間にあり、その近くに車上側のモーターを取り付けるため、車体高さを低くできるのです。車体高さが低ければ、トンネル断面を小さくすることができます。それため、建設コストを大幅に下げることができるわけです。
さらに、車輪はレール上を転がるだけで、車輪とレールの摩擦を利用した走行をするわけではないので、勾配に強い鉄道となります。同じ理由で、雨が降ってもレールが凍っても加減速に影響しません。
このため、都市鉄道でありながら利用者数がさほど多く見込めない路線で、この方式の地下鉄が造られているわけです。

仙台市営地下鉄東西線は、新しい路線だけあって、全駅がホームドア対応となっています。さらに、ホームから改札階を経て地上まで、エスカレーターとエレベーターによるバリアフリー対策が全駅で行われています。
その車両には、控えめながら誇らしげに「祝開業」のステッカーが貼られていました。


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日本一標高の高い地下鉄駅となった、西側の終点・八木山動物公園駅。駅のレール面が標高136.4メートル。
国際センター駅から西方向の列車に乗ると、川内(かわうち)駅、青葉山駅と東北大学のキャンパスに囲まれた駅が続きます。地下トンネルが続きますが、気をつけてみると、少しずつ勾配を登っている様子が分かります。
青葉山駅から終点の八木山動物公園駅まで、さらに登り坂が続きますが、その途中、突然明かり区間に出ます。竜ノ口渓谷というかなり深い渓谷で、ここを橋梁で渡るのです。

到着した八木山動物公園駅は、レール面が標高136. 4メートルと、日本一高い地下鉄駅となりました。
ちなみに同駅が開業するまでは、神戸市交通局西神・山手線の総合運動公園駅の標高103メートルが日本一高い地下鉄駅でした。しかし、同駅付近は地下鉄の延長部分というだけで、トンネルは多いものの明かり区間の方が長くなっています。
それに対して、八木山動物公園駅は完全に地下にあり、文字どおり地下鉄の最高地点駅と納得できる駅です。
駅名のとおり、駅近くには八木山動物公園がありますが、それだけではなく住宅地も広がっています。駅名から予想していった駅周辺風景とはまったく違う光景に、筆者は正直驚きました。
知識だけでなく、実際に行ってみて判ることは多くありますが、この駅の立地や周囲の環境などは、まさに百聞は一見にしかずでした。


掲載日:2015年12月25日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。