日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「高知でみるユニークな駅…ごめん、ありがとう、三志士像」

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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

高知でみるユニークな駅…ごめん、ありがとう、三志士像 [No.H200]

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これだけ「ごめん」を連発されると、思わず「もういいから…」と言ってしまいそう。
全国にはユニークな駅がいろいろとありますが、その中で比較的知られているのが「ごめん駅」でしょうか。
「後免」という地名からきている駅ですが、路面電車を運行するとさでん交通が、行き先表示に「ごめん」と表示していることで、さらにユニークさが増しています。
そのとさでん交通は今夏、非冷房車に

   「申し訳ございません この電車は冷房車ではありません」

と貼り出して運行しているそうです。それも、行先表示「ごめん」のすぐ横だということです。
ただし、とさでん交通の電停名は「御免町(ごめんまち)」であることは、意外と知られていないようです。

その「町」がつかない「後免駅」は、JR四国土讃線にあります。後免~後免町間は1.1kmで、土佐くろしお鉄道が結んでいます。
後免駅の、土佐くろしお鉄道が発着するホームにあるのが、右上の写真にある石碑とキャラクター像です。
キャラクターは「ごめんえきお君」という、同駅のキャラクターです。土佐くろしお鉄道は、全20駅すべてにこのようなキャラクターがいます。
各駅キャラクターの生みの親は、アンパンマンの作者として知られる、故・やなせたかし氏です。同氏は子どもの頃、後免~後免町の中ほどにある学校に通っていたそうです。その関係で、出身地を走る土佐くろしお鉄道に対して、なにかと協力されていたようです。
キャラクターが立っている石碑に書かれている詞も同氏の作で、タイトルは「ごめん駅でごめん」です。それにしても、これだけ「ごめん」が並ぶと壮観ですよね。機嫌が良くないときでも、思わず「もう良いから…」と言ってしまいそうです。


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やなせたかし氏の自筆による、「ありがとう駅」という愛称をつけた理由を記した一文。キャラクターは、ごめんまちこさん。
後免駅の次は、前述のとおり後免町です。そのキャラクターは「ごめんまちこさん」。
と、ここまでは、そういうこともあろうかという展開です。
ところが、ホームにはご覧の通り「ありがとう駅」という案内板が建っています。
あれあれ? と思うと、そこには「愛称」と記したうえで、やなせたかし氏による一文がありました。同文は次のようにはじまります。

   ごめん駅があれば
   ありがとう駅も欲しい

ごめんごめんと謝っているばかりでなく、ありがとうと感謝の言葉も口にしようとは、やなせ氏らしい気配りの一文ですよね。
この愛称がついたのは、平成16(2004)年のことだそうです。土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線が開業したのは平成14年ですから、開業から2年後のことでした。
ごめん・なはり線は、この先も、各駅ごとに個性的なキャラクターが出迎えてくれます。


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高知駅前の三志士像。左から、武市半平太、坂本龍馬、中岡慎太郎。いずれも、幕末に活躍した志士たち。
前述のキャラクターたちとうって変わって、こちらはなかなか勇ましい武士三名の銅像です。
ここは、JR高知駅前で、とさでん交通の高知駅前電停からすぐのところです。
「三志士像」と呼ばれていて、左から、武市半平太、坂本龍馬、中岡慎太郎という土佐藩で幕末に活躍した偉人達です。
武市半平太は、土佐勤王党という尊皇攘夷思想の集団を作った人で、そこに集まったなかに、坂本龍馬と中岡慎太郎がいました。
後年、武市半平太は土佐藩に残ったものの自刃を言い渡されて割腹。坂本龍馬と中岡慎太郎は、密談をしていた京都の近江屋で刺客に襲われて落命しています。近江屋事件と呼ばれている幕末のできごとです。
このように、いずれも志半ばで他界しているものの、その動きによって薩長同盟ができるなどして徳川時代が終わりました。このため、明治維新の立役者として、いまも幕末の三志士が地元の誇りとなっているわけです。

なお、この三志士像は、NHK大河ドラマ「龍馬伝」が放映された翌年となる平成23(2011)年7月に完成しました。
この年は、土佐勤王党結成150年でした。さらに、この銅像と駅の間に“「龍馬伝」幕末志士社中”という観光施設がオープンすることを記念してのことでした。
ちなみに、写真の右下に見えるのがJR高知駅です。
ご覧の通り、文字どおり駅前に位置していますので、高知へ行くことがあれば、ぜひ見てきたい銅像です。


掲載日:2016年08月12日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。