日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「本土最南端の旅…指宿枕崎線から鹿児島市電へ」

[ ここから本文です ]

汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

本土最南端の旅…指宿枕崎線から鹿児島市電へ [No.H221]

イメージ
クリックして拡大
普通鉄道として日本最南端の駅となる西大山駅には、「JR日本最南端の駅」の碑が建っている。
前回「本土最南端の始発・終着駅」として枕崎駅を紹介しました。
同駅は指宿枕崎線の終点にありますが、この指宿枕崎線には、ほかにも最南端があります。今回は、そんな指宿枕崎線の見どころについてご紹介しましょう。

枕崎駅から指宿や鹿児島中央方面の上り列車に乗ると、50分強で西大山(にしおおやま)駅に着きます。この駅が、JRで最南端に位置する駅です。沖縄にゆいレールができるまでは、文字どおり日本最南端の駅でしたが、沖縄という圧倒的な南に位置する駅には適いません。
ところが、国鉄時代からホームの端に「日本最南端の駅」碑があり、この存在が観光客を呼んでいます。そこで、JR九州はこの碑の最上部に「JR」と書き加えました。結果、「JR日本最南端の駅」という日本語としてはいささか不自然な表記になったものの、意味は分かるし間違いもないので、引き続き観光客に人気となっています。
なお、ゆいレールはモノレールで、軌道法を採用しています。ですから、二本のレールの上を走る普通鉄道としては、西大山駅が今でも日本最南端の駅となっています。
枕崎駅から31. 1kmの距離ですが、指宿からだと11. 0kmと近いので、指宿の宿のなかには列車の時刻に合わせて西大山駅まで送ってくるサービスがあるようです。西大山駅から指宿駅までは3駅、運賃280円で最南端の駅を利用できるのは、気軽で良いですよね。
筆者が以前訪れたときには、最南端の駅から最北端の稚内駅を目指すというツアー参加者たちもいました。
午前7,8,9時台に各1本の指宿方面の列車があるので、これらの時刻には宿の送迎車・タクシー、ツアー用バスなどが駅前に次々とやってきます。まさに観光地です。


イメージ
クリックして拡大
車窓として、薩摩富士とも称される美しい開聞岳を眺めることができる。
西大山駅の下り方となる枕崎側の駅は、薩摩川尻・東開聞・開聞と続きます。その駅名にある通り、開聞岳の裾野を走る区間となっています。
開聞岳は薩摩富士と称されるほどきれいな姿をした独立峰で、その南と西は海に面しています。海から真っ直ぐにそそりたっているうえ、周囲は低い土地なので、標高924メートルでありながら、かなり遠くからでもそれと判る存在です。
指宿枕崎線は開聞岳の北側を通り、もっとも近付くのが開聞駅ですが、むしろ少し離れた西大山駅や開聞駅の下り方にある入野駅あたりの方が山全体の様子がよくわかります。
そんな開聞岳の姿を楽しむ区間は、指宿枕崎線の車窓のハイライトといってよいでしょう。


イメージ
クリックして拡大
「日本最南端の電停」碑がある、鹿児島市電の谷山電停。かのラサール高校の最寄り電停でもある。
指宿枕崎線は、指宿から鹿児島方向で海の景色を楽しめる区間となります。晴れていると、対岸の大隅半島や桜島も見ることができます。
そんな指宿枕崎線の車窓に民家が増えてきたなと思う頃に着くのが谷川駅です。高架化されたあまり特徴のない駅ですが、同駅で下車して線路沿いの国道を500メートルほど歩くと、鹿児島市電の谷山電停に着きます。
この谷山電停には「日本最南端の電停」と記した碑が建っています。軌道法という意味では、前述した沖縄県のゆいレールが最南端になりますが、モノレールですからやはり呼称は「駅」ですよね。「電停」は路面電車に似合います。
西日本の都市を中心として、各地で走る路面電車ですが、その最も南にあるのが鹿児島市電です。昨年11月4日付当コラムで『鹿児島市電の観光レトロ電車「かごでん」』を紹介しましたが、この「かごでん」は、鹿児島の中心部を一周するような行程で、市街地からはやや南の郊外に位置する谷山までは来ません。
鹿児島中央駅からだと、郡元電停で乗り換えて谷山電停まで7. 1km、所要30分弱です。JR指宿枕崎線だと鹿児島中央~谷山間が11-15分ですので、速さの点ではさすがに鉄道に分があります。しかし、市街地を眺めながら揺られる市電も良いものですよね。途中、郡元で乗換があるものの、一乗車170円で良いので、その点でも気軽に乗ることができます。
最南端を訪ねる鉄旅には、この谷山電停もぜひ加えて下さいね。

掲載日:2017年01月20日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。