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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
汽車旅で立ち寄った中国勝山は、白壁の町並みだった [No.H227]
岡山へ出張した際、珍しく要件が午前中に終わりました。
天気の良い日で、午後はどこへ行こうかと考えたとき、いくつか案がある中で、なぜか無性に行きたくなったのが姫新線の西部でした。
姫新線は、文字どおり姫路と伯備線の新見を結ぶ158. 1kmの路線ですが、直通する列車はありません。というのも、同線は大きく次の3区間に分かれているのです。
姫路~佐用 45 .9km
佐用~津山 40. 4km
津山~新見 71. 8km
このうち、佐用駅では智頭急行線と接続、津山駅とその一つ姫路寄りの東津山駅では津山線と因美線に接続しています。
ところが、津山~新見間71. 8kmは接続する路線がなく、さらに所要約1時間40分を直通するのは一日わずか6.5往復だけです。ほかに、中間付近に位置する中国勝山駅から津山駅までの区間運行便が5.5往復あります。つまり、新見~中国勝山間は、特に乗りにくい区間というわけです。この区間で途中下車をすると、次の列車までかなりの時間を持てあますことになりそうです。
このような線区ですので、以前一度乗り通したことはあるものの、途中下車はしていません。
そこで、まずは新見駅から中国勝山駅まで乗り、街歩きをしてから津山に向かうことを考えました。この時点で、中国勝山の町に関する知識は無く、拠点駅なのでそれなりの町があるだろうという程度の感覚でした。
新見駅13:39発の列車は約50分間、中国地方の山間部をくねくねと走り、14:30に中国勝山駅に到着しました。山間の駅で、近くに迫る、高くはないちょっと丸みを帯びた山々は、中国山地らしい光景です。
中国勝山駅はなかなか大きな駅舎をもち、中に観光案内所やうどん屋さんもあります。
白壁作りの日本家屋をイメージしたような駅舎に観光案内所があることから、観光に力を入れている様子が伺えます。
筆者の場合、駅で下車したらできるだけ駅前を歩くようにしています。すると、かつて駅を中心に発展した町だとか、もともとある町のはずれに鉄道駅ができたといった、駅と町の関係が判ることが多いのです。また、駅前商店街があるところ、あったところには、それなりの風情が残っていることも多いものです。そんな街歩きも、汽車旅の醍醐味のひとつです。
中国勝山駅でも、まずは駅前の交差点まで歩いてみました。
この交差点は出雲街道と呼ばれる国道181号線が左右を走り、そこを越えると町ができていることは、見てすぐに分かりました。ところが、その交差点から斜めに入る、かつての出雲街道と思われる道筋に、大きな鳥居のような門構えがあり、梁の部分に大きく「檜舞台」と記してあります。その先の町並みも、なにやら歴史にこだわった通りとなっています。
これはと思って歩を進めると、武家屋敷はこちらという案内があったので、そちらに向かいます。武家屋敷からさらに進むと、立派な寺院が並んでいるところに出ました。山の麓に位置していますが、その背後の勝山がかつて勝山城のあった地で、ここまで歩いてきたのは城下町として発展した地域でした。
さらに勝山郷土資料館のある旭川沿いにでると、そこは一目で旧街道筋とわかる通りとなっています。岡山県初の町並み保存地区だそうで、電線は地中化されて町並みがスッキリとしているだけでなく、白壁の家が多く建ち並んでいます。実に風情のある町並みで、家々には暖簾(のれん)が掛かっています。地酒の蔵元もあります。
この日はウイークデー、それも真冬の午後、日が傾きかけたころでしたので人影はまばらでしたが、観光シーズンの週末にはきっと多くの観光客がやってきていることでしょう。
冒頭に記したとおり、なんの計画もなく、途中下車した駅にある町をぶらぶら歩いて時間をつぶすつもりでした。ところが、気がつくと、すでに駅をでてから1時間以上歩き回っていました。あまりゆっくりしていると、次の列車に乗り遅れそうです。乗り遅れたらさらに1時間半後まで列車がなく、岡山に戻るのが夜遅くなってしまいます。
そこで、町並みを見るだけにして、武家屋敷にも蔵元にも寄らずに駅に戻りました。後ろ髪を引かれながら…
駅で待っていたのは、国鉄形の気動車(ディーゼルカー)キハ40形。それも国鉄塗装車です。若い頃、周遊券を握りしめて、さんざん全国各地で乗った車両だけに、なんとも懐かしい思いがします。
16:08発と夕方もまだ早い時間で、さらに通学と逆方向のようなので、とてもすいています。これ幸いとボックスシートを独り占めして、再び車窓を楽しむこととなりました。
津山までの50分間は、淡々と中国山間部の農村地帯を進む線区でした。特に見どころはなかったものの、久しぶりの汽車旅をじっくりと楽しむひとときになったのでした。
なお、中国勝山駅の近くに広がる勝山の町では、同地で名物となっている「勝山のお雛まつり」が3月2日(木)~6日(月)に開かれています。1999年から続く、間もなく20年になろうとする勝山を代表するイベントだということです。
「檜舞台」の新町商店街と、町並み保存地区を中心に行われているということですので、きっとこの週末は、白壁の町並みに人が大勢行き交っていることと思います。
掲載日:2017年03月03日
天気の良い日で、午後はどこへ行こうかと考えたとき、いくつか案がある中で、なぜか無性に行きたくなったのが姫新線の西部でした。
姫新線は、文字どおり姫路と伯備線の新見を結ぶ158. 1kmの路線ですが、直通する列車はありません。というのも、同線は大きく次の3区間に分かれているのです。
姫路~佐用 45 .9km
佐用~津山 40. 4km
津山~新見 71. 8km
このうち、佐用駅では智頭急行線と接続、津山駅とその一つ姫路寄りの東津山駅では津山線と因美線に接続しています。
ところが、津山~新見間71. 8kmは接続する路線がなく、さらに所要約1時間40分を直通するのは一日わずか6.5往復だけです。ほかに、中間付近に位置する中国勝山駅から津山駅までの区間運行便が5.5往復あります。つまり、新見~中国勝山間は、特に乗りにくい区間というわけです。この区間で途中下車をすると、次の列車までかなりの時間を持てあますことになりそうです。
このような線区ですので、以前一度乗り通したことはあるものの、途中下車はしていません。
そこで、まずは新見駅から中国勝山駅まで乗り、街歩きをしてから津山に向かうことを考えました。この時点で、中国勝山の町に関する知識は無く、拠点駅なのでそれなりの町があるだろうという程度の感覚でした。
新見駅13:39発の列車は約50分間、中国地方の山間部をくねくねと走り、14:30に中国勝山駅に到着しました。山間の駅で、近くに迫る、高くはないちょっと丸みを帯びた山々は、中国山地らしい光景です。
中国勝山駅はなかなか大きな駅舎をもち、中に観光案内所やうどん屋さんもあります。
白壁作りの日本家屋をイメージしたような駅舎に観光案内所があることから、観光に力を入れている様子が伺えます。
筆者の場合、駅で下車したらできるだけ駅前を歩くようにしています。すると、かつて駅を中心に発展した町だとか、もともとある町のはずれに鉄道駅ができたといった、駅と町の関係が判ることが多いのです。また、駅前商店街があるところ、あったところには、それなりの風情が残っていることも多いものです。そんな街歩きも、汽車旅の醍醐味のひとつです。
中国勝山駅でも、まずは駅前の交差点まで歩いてみました。
この交差点は出雲街道と呼ばれる国道181号線が左右を走り、そこを越えると町ができていることは、見てすぐに分かりました。ところが、その交差点から斜めに入る、かつての出雲街道と思われる道筋に、大きな鳥居のような門構えがあり、梁の部分に大きく「檜舞台」と記してあります。その先の町並みも、なにやら歴史にこだわった通りとなっています。
これはと思って歩を進めると、武家屋敷はこちらという案内があったので、そちらに向かいます。武家屋敷からさらに進むと、立派な寺院が並んでいるところに出ました。山の麓に位置していますが、その背後の勝山がかつて勝山城のあった地で、ここまで歩いてきたのは城下町として発展した地域でした。
さらに勝山郷土資料館のある旭川沿いにでると、そこは一目で旧街道筋とわかる通りとなっています。岡山県初の町並み保存地区だそうで、電線は地中化されて町並みがスッキリとしているだけでなく、白壁の家が多く建ち並んでいます。実に風情のある町並みで、家々には暖簾(のれん)が掛かっています。地酒の蔵元もあります。
この日はウイークデー、それも真冬の午後、日が傾きかけたころでしたので人影はまばらでしたが、観光シーズンの週末にはきっと多くの観光客がやってきていることでしょう。
冒頭に記したとおり、なんの計画もなく、途中下車した駅にある町をぶらぶら歩いて時間をつぶすつもりでした。ところが、気がつくと、すでに駅をでてから1時間以上歩き回っていました。あまりゆっくりしていると、次の列車に乗り遅れそうです。乗り遅れたらさらに1時間半後まで列車がなく、岡山に戻るのが夜遅くなってしまいます。
そこで、町並みを見るだけにして、武家屋敷にも蔵元にも寄らずに駅に戻りました。後ろ髪を引かれながら…
駅で待っていたのは、国鉄形の気動車(ディーゼルカー)キハ40形。それも国鉄塗装車です。若い頃、周遊券を握りしめて、さんざん全国各地で乗った車両だけに、なんとも懐かしい思いがします。
16:08発と夕方もまだ早い時間で、さらに通学と逆方向のようなので、とてもすいています。これ幸いとボックスシートを独り占めして、再び車窓を楽しむこととなりました。
津山までの50分間は、淡々と中国山間部の農村地帯を進む線区でした。特に見どころはなかったものの、久しぶりの汽車旅をじっくりと楽しむひとときになったのでした。
なお、中国勝山駅の近くに広がる勝山の町では、同地で名物となっている「勝山のお雛まつり」が3月2日(木)~6日(月)に開かれています。1999年から続く、間もなく20年になろうとする勝山を代表するイベントだということです。
「檜舞台」の新町商店街と、町並み保存地区を中心に行われているということですので、きっとこの週末は、白壁の町並みに人が大勢行き交っていることと思います。
掲載日:2017年03月03日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。