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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

意外なほど面白い、仙山線の楽しみ方 1/2 [No.H232]

2月3日付の当コラム「交流電化発祥地で地道な活動を続ける東北福祉大」の末尾で、『仙山線にはそのほかにも見どころが多くありますので、それらについては改めてご紹介しようと思っています。』と記しました。
その見どころを、今回と次回の2回に分けて紹介します。


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昭和4年の開業時からある北仙台駅舎。五角形の出入口屋根に半円の窓をあしらった瀟洒な建物だ。
仙山線は、その名が示すとおり、仙台と山形を結ぶ路線です。
仙台駅を北向きに発車した仙石線の列車は、しばらく東北本線と並行に進みます。その後、いったん右カーブしたうえで、左カーブとなって東北本線をオーバークロスします。
東北本線から分岐してからは、ひたすら山形に向けて西進することになります。その最初の駅は東照宮駅です。国指定重要文化財の本殿・山門・鳥居等がある仙台東照宮が、駅から徒歩3分のところに位置しています。
宮名から分かるとおり徳川家康を祀る神社で、伊達家の二代目・伊達忠宗が幕府の許可のもと造営したということです。

さらに西進すると、北仙台駅に着きます。
仙台駅からは4. 8キロの距離で所要約6分ですが、仙台市営地下鉄南北線だと両駅をほぼまっすぐに結んでいるため、距離は3. 1キロと短くなります。
ただし、仙山線では2駅目の北仙台駅ですが、地下鉄だと4駅目となるため所要時間は約7分とさほど変わりません。また、運賃は仙山線の190円(ICカード運賃185円)に対して、地下鉄は250円と割高です。
昭和4(1929)年9月29日に仙台駅~愛子(あやし)駅間15. 2キロが開通したときに、中間駅として陸前落合駅とともに開業した駅です。昭和初期の駅舎だけあって、出入口上部が五角形の屋根になっているなど、端正でありながらも瀟洒な建物で、一見の価値があります。
かつては、この駅前に仙台市電が乗り入れていたということですが、駅前広場をみると、そのことも納得できます。


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近年にできたということがわかる駅舎は、東北福祉大前駅。改札は3階で、左の階段を下りると道路に出る。
北仙台駅を過ぎると、蔵王に連なる奥羽山脈越えがはじまります。
連続する勾配を上って、徐々に高度を上げていく列車は、北山駅を経て、次に停まるのが東北福祉大前駅です。
平成19(2007)年3月18日に開業した仙山線でもっとも新しい駅で、先月、開業10周年を迎えたばかりです。それだけに、駅舎は近代的で、前述の北仙台駅舎とはまったく趣が異なります。
改札口を出ると、目の前に東北福祉大学ステーションキャンパスがあります。駅前大学という実に珍しい存在ですが、その校舎に入ったところに、2月3日付の当コラム「交流電化発祥地で地道な活動を続ける東北福祉大」で紹介した鉄道交流ステーションがあります。
駅と校舎は平面でつながっているため、行き来するだけでは気付きにくいのですが、ここは3階になっています。写真の左下に写っている階段を下りていくと、キャンパスの横を通る道路に出るのです。線路と道路はもちろん立体交差しています。
地図をよく見ると、東北福祉大前駅はSカーブになっている仙山線の途中に位置しています。しかも急勾配が続いています。
よくこの場所に駅を作ったものだと思いますが、そのこともテーマに含めた企画展を、いま鉄道交流ステーションで開催しています。


7月5日(水)までの毎日10:00~16:00で入場無料。休館日は日・月曜日と祝日です。


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トレッスル橋としては日本一の高さを誇る第二広瀬川橋梁。列車で通過するのは一瞬だが、仙山線の見どころの一つ。
東北福祉大前駅からさらに高度を上げていく仙山線は、やがて愛子(あやし)駅に着きます。ここまでは仙台通勤圏で、昼間でも1時間に3本の列車があります。仙台駅から15. 2キロの地で所要約26分です。
しかし、愛子駅を過ぎると列車本数は3分の1となり、日中は1時間に1本となります。それも、2本に1本が快速列車なので、快速が停車する愛子駅と作並駅の間にある陸前白沢駅と熊ヶ根駅には、上下それぞれ日中2-3時間に1本しか列車が停まりません。
その陸前白沢駅~熊ヶ根駅間3. 1キロの中間やや熊ヶ根駅側にあるのが、右の写真の第二広瀬川橋梁です。
広瀬川は、伊達政宗が築城した青葉城(仙台城)の外堀になっていました。その広瀬川の上流に架かる橋です。見ての通り、鉄骨を組んだトレッスル橋です。

トレッスル橋としては、当コラムで2015年5月15日に紹介した南海電鉄高野線の中古沢橋梁、2013年8月9日に紹介した山陰本線の旧余部(あまるべ)鉄橋などが有名です。しかし、余部鉄橋は新たなコンクリート橋梁に架け替えられたため、いま現役の鉄道橋としては、この第二広瀬川橋梁が日本一高いトレッスル橋となっています。その川底からの高さは51メートルもあります。
前後は平地を走る仙石線だけに、いきなり深い渓谷を渡る様子にはビックリさせられます。ただ、134. 4メートルと電車6-7両分しかない鉄橋、それも最深部は3両分程度なので、4両編成の電車に乗っているとあっという間に通過してしまいます。
この区間に乗るときには、見落とさないように注意していましょう。

掲載日:2017年04月07日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。