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- 2018年07月06日(金)掲載
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- [No.H290] 鉄道の父「井上勝」像でつながる山陰本線萩駅と東京駅
- 2018年06月15日(金)掲載
- [No.H289] 鉄道の父「井上勝」像がある、山陰本線萩駅
- 2018年06月08日(金)掲載
- [No.H288] 大阪市営地下鉄は、民営化して Osaka Metro に
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
鉄旅オブザイヤー受賞の「ながまれ海峡号」の魅力1 [No.H242]
飲食を楽しみながら列車の旅をする観光列車は、近年ブームと呼べるほど多く誕生し、内容も充実してきました。その最高峰はJR各社が手がける「ななつ星in九州」「TRAIN SUITE 四季島」「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」(登場順)といった超豪華クルーズトレインです。おいそれとは手が出ない価格と、抽選倍率の高さでも話題になっていますよね。
これほど異次元の高級感はなくとも、そこそこの特別感があり、乗って楽しく食べて美味しい観光列車も全国に多く登場しています。それらは基本的に鉄道会社が走らせているのですが、唯一、北海道で走る「ながまれ海峡号」だけは、当サイトを開設している日本旅行がプロデュースし「赤い風船」ブランドで販売するツアー列車です。
昨年から走りはじめた「ながまれ海峡号」の今年の運行開始を待って、筆者が実際に乗車体験してきました。
ほかならぬ日本旅行がプロデュースする列車ですので、その魅力について、今回から連載でお伝えします。また、沿線にある鉄道の見どころなどについても、連載中に紹介していこうと思っています。
間もなく夏本番がやってきます。その後に続く味覚の秋とともに、北海道が人気の季節ですよね。渡道される際の参考にして下さい。
昨年(2016年)3月に北海道新幹線が開業すると同時に、並行在来線として経営分離された江差線・五稜郭~木古内間は、第三セクターの“道南いさりび鉄道”として運行をはじめました。
全列車が五稜郭駅の隣駅となる函館駅に直行するという、通学圏に位置する路線ながら、それは全路線の中間付近にある上磯駅まで。上磯駅~木古内駅間の西半分は、2時間に1本くらいしか旅客列車が走らず、たった1両で走っても車内はガラガラという状態です。
この空気を運ぶような鉄路に魅力を与えるべく、開業直後から運行をはじめたのが「ながまれ海峡号」です。
5月から月に1-2回の週末に、土曜日がディナーコース、日曜日にランチコースが運行されています。運行初年となる昨年はディナーコースだけでしたので、今年はパワーアップしています。
その理由は、昨年計15回運行したいずれもほぼ満席になったこと、それに内容面が評価されて、今年1月に交通新聞社が主催する「鉄旅 OF THE YEAR」の最高賞であるグランプリを受賞したことです。
2011年からはじまった「鉄旅 OF THE YEAR」は、「企画性やオリジナリティにこだわって造成した国内の優れた鉄道旅行商品に対して表彰」するという趣旨で毎年開催されています。これまでも日本旅行の商品が各賞を受賞していますが、グランプリは6回目にして初めての受賞です。
前述の通り、開業当初から厳しい経営が予想されている道南いさりび鉄道ですから、車両に贅沢ができません。開業時には、国鉄時代に製造されたキハ40形ディーゼルカーを9両、中古車両としてJR北海道から購入しました。
そのうちの2両にラッピングを施し、車内で飲食ができるよう改造しています。ラッピングの基調色は、夏の真っ青な海と豊かな森を表し、車体を一周するグレーの帯は、車窓から見られる函館山の稜線を表しているそうです。そこに点々と赤っぽい円形がありますが、函館湾に浮かぶ漁船の漁り火ということです。
ところで、日本旅行の担当者が「日本一貧乏な観光列車」と表現するほどの列車ですので、このツアーのときだけ使用する専用車両とすることはできません。「ながまれ海峡号」としての運行をしていないときには、他の車両に混ざって定期列車に使用されています。
定期列車にも観光列車にも使える仕様にした費用は、2両でわずか3000万円。北海道が予算化してくれた全額を使用して対応し、独自に支出することを控えたという堅実なものです。それにもかかわらず、実際に乗ってみると、清潔感がありそこそこ快適です。
なにより、ツアー造成に慣れている日本旅行、それに日本旅行のなかでも鉄道好きが集まる鉄道プロジェクトのノウハウを活かした内容ですので、約4時間という汽車旅が長く感じられない、もっと乗っていたいと思わせる美味しいツアーでした。
そんな「ながまれ海峡号」の魅力について、次回から順に紹介していきます。
掲載日:2017年06月23日
これほど異次元の高級感はなくとも、そこそこの特別感があり、乗って楽しく食べて美味しい観光列車も全国に多く登場しています。それらは基本的に鉄道会社が走らせているのですが、唯一、北海道で走る「ながまれ海峡号」だけは、当サイトを開設している日本旅行がプロデュースし「赤い風船」ブランドで販売するツアー列車です。
昨年から走りはじめた「ながまれ海峡号」の今年の運行開始を待って、筆者が実際に乗車体験してきました。
ほかならぬ日本旅行がプロデュースする列車ですので、その魅力について、今回から連載でお伝えします。また、沿線にある鉄道の見どころなどについても、連載中に紹介していこうと思っています。
間もなく夏本番がやってきます。その後に続く味覚の秋とともに、北海道が人気の季節ですよね。渡道される際の参考にして下さい。
昨年(2016年)3月に北海道新幹線が開業すると同時に、並行在来線として経営分離された江差線・五稜郭~木古内間は、第三セクターの“道南いさりび鉄道”として運行をはじめました。
全列車が五稜郭駅の隣駅となる函館駅に直行するという、通学圏に位置する路線ながら、それは全路線の中間付近にある上磯駅まで。上磯駅~木古内駅間の西半分は、2時間に1本くらいしか旅客列車が走らず、たった1両で走っても車内はガラガラという状態です。
この空気を運ぶような鉄路に魅力を与えるべく、開業直後から運行をはじめたのが「ながまれ海峡号」です。
5月から月に1-2回の週末に、土曜日がディナーコース、日曜日にランチコースが運行されています。運行初年となる昨年はディナーコースだけでしたので、今年はパワーアップしています。
その理由は、昨年計15回運行したいずれもほぼ満席になったこと、それに内容面が評価されて、今年1月に交通新聞社が主催する「鉄旅 OF THE YEAR」の最高賞であるグランプリを受賞したことです。
2011年からはじまった「鉄旅 OF THE YEAR」は、「企画性やオリジナリティにこだわって造成した国内の優れた鉄道旅行商品に対して表彰」するという趣旨で毎年開催されています。これまでも日本旅行の商品が各賞を受賞していますが、グランプリは6回目にして初めての受賞です。
前述の通り、開業当初から厳しい経営が予想されている道南いさりび鉄道ですから、車両に贅沢ができません。開業時には、国鉄時代に製造されたキハ40形ディーゼルカーを9両、中古車両としてJR北海道から購入しました。
そのうちの2両にラッピングを施し、車内で飲食ができるよう改造しています。ラッピングの基調色は、夏の真っ青な海と豊かな森を表し、車体を一周するグレーの帯は、車窓から見られる函館山の稜線を表しているそうです。そこに点々と赤っぽい円形がありますが、函館湾に浮かぶ漁船の漁り火ということです。
ところで、日本旅行の担当者が「日本一貧乏な観光列車」と表現するほどの列車ですので、このツアーのときだけ使用する専用車両とすることはできません。「ながまれ海峡号」としての運行をしていないときには、他の車両に混ざって定期列車に使用されています。
定期列車にも観光列車にも使える仕様にした費用は、2両でわずか3000万円。北海道が予算化してくれた全額を使用して対応し、独自に支出することを控えたという堅実なものです。それにもかかわらず、実際に乗ってみると、清潔感がありそこそこ快適です。
なにより、ツアー造成に慣れている日本旅行、それに日本旅行のなかでも鉄道好きが集まる鉄道プロジェクトのノウハウを活かした内容ですので、約4時間という汽車旅が長く感じられない、もっと乗っていたいと思わせる美味しいツアーでした。
そんな「ながまれ海峡号」の魅力について、次回から順に紹介していきます。
掲載日:2017年06月23日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。