日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「軍港の町・舞鶴の歴史を残す廃線跡を辿る」

[ ここから本文です ]

汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

軍港の町・舞鶴の歴史を残す廃線跡を辿る [No.H251]

イメージ
クリックして拡大
中舞鶴線の廃線跡に残る、登録有形文化財の北吸トンネル。トンネル内の赤レンガもよく残っている。
京都府北部に位置する舞鶴市は、かつて海軍の基地があり、いまも海上自衛隊舞鶴地方総監部がある軍港の町として知られています。
軍事輸送に鉄道が活用されていたのは、主に明治後期から第二次世界大戦まででした。舞鶴への鉄道敷設が明治37年と比較的早かったのも、軍事輸送のためでした。
官設鉄道(後の国鉄)が舞鶴~福知山間を開設し、大阪近くの尼崎から福知山までを開設済みの阪鶴鉄道に接続したのでした。その阪鶴鉄道はすぐに国有化されたことで、いまの福知山線と舞鶴線になっています。
舞鶴線には東舞鶴駅と西舞鶴駅がありますが、どちらもやや内陸に位置しています。このため、両駅からそれぞれ港に向かう支線も作られました。
東舞鶴駅からの支線は、同駅の少し西側から分岐する中舞鶴線です。大正8年に開業し、昭和47年に廃止となっていますが、いまも舞鶴市内の地図でその廃線跡がはっきり判ります。それもそのはず、廃線跡が遊歩道として整備されているのです。
東舞鶴駅の北口を出て最初の信号を左折すると、駅から約300メートルで廃線跡に出ます。舞鶴共済病院の東側に沿っていますので、同病院を目指していくと良いでしょう。
整備された廃線跡を歩き始めると、すぐにレンガ巻きのトンネルが現れます。登録有形文化財となっている北吸トンネルです。トンネルポータルはもちろんのこと、内部の赤レンガもよく残っています。


イメージ
クリックして拡大
舞鶴赤れんがパークでは、かつて使われていたレールがあちこちで見られる。
北吸トンネルを出て一般道を横断した先に、かつて北吸駅がありました。開業時には東門駅を名乗り、東門衛兵詰所の前に位置していたようです。その駅跡を過ぎると遊歩道は終わり、国道27号線に出ます。この国道を地下道でくぐった先に、舞鶴赤れんがパークがあります。旧海軍ゆかりの赤レンガ建物が12棟も建ち並び、そのうち8棟が国の重要文化財に指定されている一帯です。
歩いてきた廃線跡・中舞鶴線は、この倉庫群に沿って西進し、さらに先まで続いていました。その途中から舞鶴海軍工廠への引き込み線がありました。引き込み線そのものは既にありませんが、この線で運び込まれた物資を工廠内の倉庫等に運び込むためのレールが、いまも残っています。
引き込み線からさらに分岐しているため、手押しトロッコを使っていたと思われる、細いレールです。左上の写真は「赤れんがロード」と呼ばれる赤れんがで造った物品運搬通路と、文部科学省所管の赤レンガ倉庫(明治35年築)に入るレールが交叉しているところです。


イメージ
クリックして拡大
「まいづる知恵蔵」に保存展示されている貨車移動機
舞鶴赤れんがパーク内には、かつての海軍関係の資料とともに、鉄道に関する資料も展示されています。その一つが、右の写真の貨車移動機です。
赤れんが3号館「まいづる知恵蔵」内に保存されているもので、同車の背後にはトロッコも置かれています。
現地の説明にはDB10形で、戦前から改良を繰り返したという説明があります。この説明が全くの間違いとは記しづらいのですが、重量10トンの貨車移動機とした方がより間違いないと思います。
昭和53年に協三製作所で製造され、平成17年まで福知山運転所で使われたあと、この場所に保存されています。
「まいづる知恵蔵」は、赤れんが3号館として探せばすぐに判りますが、その中にある保存場所は入口からやや奥まったところのため、ちょっと見つけにくくなっています。実際、筆者が訪問した際にはちょうどイベントが行われていて、多くの人が「舞鶴赤れんがパーク」を行き来していたのですが、この場所は、ときおり来訪者がある程度で閑散としていました。
この地に行かれるなら、見忘れないようにしてくださいね。


掲載日:2017年09月01日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。