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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
東武鉄道が今夏から走らせ始めた「SL大樹」号 [No.H254]
東武鉄道は、大手私鉄では唯一となる蒸気機関車牽引による観光列車を去る8月10日に走らせ始めました。列車名は「SL大樹(たいじゅ)」です。「大樹」は将軍を意味する呼称で、徳川家康を祀る日光東照宮の近くを走るだけに、お似合いといえましょう。
大手私鉄でもかつては蒸気機関車を運転していましたし、名古屋鉄道グループの明治村では明治時代に製造された蒸気機関車を今も走らせています。しかし、観光列車として営業線で蒸気機関車牽引列車を走らせる大手私鉄は、東武鉄道が唯一となります。
運転区間は、日光線と鬼怒川線が分岐する下今市駅から、鬼怒川線の鬼怒川温泉駅までの12.4キロメートルです。日光や鬼怒川地区を観光し、鬼怒川温泉に宿泊するという、観光客が回遊するルート上に位置しています。
土・日・祝日に走るほか、紅葉をはじめとした観光シーズンである10,11月は、金曜日と月曜日にも運転します。冬季も含めた年間を通しての運転で、運転日には次の3往復6本の「SL大樹」が走ります。
※東武WSは「東武ワールドスクウェア」駅
乗車には普通乗車券のほかに、大人750円、小児380円の座席指定料金が必要となります。東武鉄道のサイトで予約をして、乗車前までに、東武鉄道の窓口で購入することができます。
「SL大樹」を運転するにあたり、東武鉄道は下今市駅の構内に「下今市機関庫」と「転車台」を用意しました。機関庫は新設ですが、転車台は山口県のJR長門市駅にあったもので、JR西日本の協力を得て移設しました。
その機関庫と転車台が見られる場所を「転車台広場」として整備して、併設されている「SL展示館」とともに、下今市駅で有効なきっぷを持っていれば、誰でも無料で見学ができるようになっています。
下今市駅の転車台に「SL大樹」牽引機のC11 207号機が載るのは、同列車運転日の8:15,12:05,15:30の3回です。
ただし、8:15は機関庫から出てきて、転車台を通過するだけで転回はしません。その代わり、8時頃から後補機となるDE10 1099号ディーゼル機関車が転車台で転回します。転回後は転線をして、留置されている14系客車の最後尾に連結されますが、その様子も「転車台広場」から間近に見学することができます。
「SL大樹」を目一杯楽しもうと思ったら、早朝から下今市駅に行く必要があるわけですね。
こちらは、鬼怒川温泉駅前です。
鬼怒川温泉に到着した「SL大樹」は、列車の先頭に立って牽引してきたC11 207号を切り放し、転線したうえで駅前に新設した転車台にやってきます。駅前ですので誰でも見学が可能で、その場に居合わせた観光客が集まってきます。
3往復の「SL大樹」が、鬼怒川温泉に到着する度に転回しますので、運転日の10:30,13:50,17:25の3回、転回する様子が見られます。
筆者が行ったのは土曜日の17:25でした。温泉宿に泊まる人はすでに宿にチェックインしてくつろいでいる時間でしょう。それでも、右上の写真のように大勢の人が集まってきました。
この転車台も、駅前につながる線路とともに「SL大樹」のために設置しました。
以前は広島県のJR三次駅にあったもので、下今市駅の転車台と同じくJR西日本の協力を得て移設しています。
蒸気機関車C11 207号機はJR北海道から借り受けているもので、保安装置の関係で機関車に続いて連結されている車掌車ヨ8634形はJR貨物から譲り受けました。もう1両ヨ8709もありますが、こちらはJR西日本から譲り受けたものです。
さらに、14系客車はJR四国から、後補機のDE10 1099号ディーゼル機関車はJR東日本からそれぞれ譲り受けています。
C11 207号機の運転・保守についても、東武鉄道で志願した社員達が、JR北海道で検修担当8名と機関助士2名、秩父鉄道と大井川鐵道で機関士各2名が各技能を学んできています。
多くの鉄道会社の協力があって、「SL大樹」の運転が始まっているわけですね。
次回は「SL大樹」の“主役”である蒸気機関車 C11 207号機が、どんな機関車なのかを紹介します。
掲載日:2017年09月22日
大手私鉄でもかつては蒸気機関車を運転していましたし、名古屋鉄道グループの明治村では明治時代に製造された蒸気機関車を今も走らせています。しかし、観光列車として営業線で蒸気機関車牽引列車を走らせる大手私鉄は、東武鉄道が唯一となります。
運転区間は、日光線と鬼怒川線が分岐する下今市駅から、鬼怒川線の鬼怒川温泉駅までの12.4キロメートルです。日光や鬼怒川地区を観光し、鬼怒川温泉に宿泊するという、観光客が回遊するルート上に位置しています。
土・日・祝日に走るほか、紅葉をはじめとした観光シーズンである10,11月は、金曜日と月曜日にも運転します。冬季も含めた年間を通しての運転で、運転日には次の3往復6本の「SL大樹」が走ります。
下今市 | 東武WS | 鬼怒川温泉 | ||||
SL大樹1号 | 9:02 | → | 9:32 | → | 9:38 | |
SL大樹2号 | 11:41 | ← | 11:13 | ← | 11:08 | |
SL大樹3号 | 13:00 | → | 13:30 | → | 13:36 | |
SL大樹4号 | 15:09 | ← | 14:41 | ← | 14:35 | |
SL大樹5号 | 16:32 | → | 17:02 | → | 17:08 | |
SL大樹6号 | 18:43 | ← | 18:15 | ← | 18:09 |
乗車には普通乗車券のほかに、大人750円、小児380円の座席指定料金が必要となります。東武鉄道のサイトで予約をして、乗車前までに、東武鉄道の窓口で購入することができます。
「SL大樹」を運転するにあたり、東武鉄道は下今市駅の構内に「下今市機関庫」と「転車台」を用意しました。機関庫は新設ですが、転車台は山口県のJR長門市駅にあったもので、JR西日本の協力を得て移設しました。
その機関庫と転車台が見られる場所を「転車台広場」として整備して、併設されている「SL展示館」とともに、下今市駅で有効なきっぷを持っていれば、誰でも無料で見学ができるようになっています。
下今市駅の転車台に「SL大樹」牽引機のC11 207号機が載るのは、同列車運転日の8:15,12:05,15:30の3回です。
ただし、8:15は機関庫から出てきて、転車台を通過するだけで転回はしません。その代わり、8時頃から後補機となるDE10 1099号ディーゼル機関車が転車台で転回します。転回後は転線をして、留置されている14系客車の最後尾に連結されますが、その様子も「転車台広場」から間近に見学することができます。
「SL大樹」を目一杯楽しもうと思ったら、早朝から下今市駅に行く必要があるわけですね。
こちらは、鬼怒川温泉駅前です。
鬼怒川温泉に到着した「SL大樹」は、列車の先頭に立って牽引してきたC11 207号を切り放し、転線したうえで駅前に新設した転車台にやってきます。駅前ですので誰でも見学が可能で、その場に居合わせた観光客が集まってきます。
3往復の「SL大樹」が、鬼怒川温泉に到着する度に転回しますので、運転日の10:30,13:50,17:25の3回、転回する様子が見られます。
筆者が行ったのは土曜日の17:25でした。温泉宿に泊まる人はすでに宿にチェックインしてくつろいでいる時間でしょう。それでも、右上の写真のように大勢の人が集まってきました。
この転車台も、駅前につながる線路とともに「SL大樹」のために設置しました。
以前は広島県のJR三次駅にあったもので、下今市駅の転車台と同じくJR西日本の協力を得て移設しています。
蒸気機関車C11 207号機はJR北海道から借り受けているもので、保安装置の関係で機関車に続いて連結されている車掌車ヨ8634形はJR貨物から譲り受けました。もう1両ヨ8709もありますが、こちらはJR西日本から譲り受けたものです。
さらに、14系客車はJR四国から、後補機のDE10 1099号ディーゼル機関車はJR東日本からそれぞれ譲り受けています。
C11 207号機の運転・保守についても、東武鉄道で志願した社員達が、JR北海道で検修担当8名と機関助士2名、秩父鉄道と大井川鐵道で機関士各2名が各技能を学んできています。
多くの鉄道会社の協力があって、「SL大樹」の運転が始まっているわけですね。
次回は「SL大樹」の“主役”である蒸気機関車 C11 207号機が、どんな機関車なのかを紹介します。
掲載日:2017年09月22日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。