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- [No.H289] 鉄道の父「井上勝」像がある、山陰本線萩駅
- 2018年06月08日(金)掲載
- [No.H288] 大阪市営地下鉄は、民営化して Osaka Metro に
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
北海道観光列車モニターツアー報告 2日目 [No.H262]
北海道観光列車モニターツアーの2日目は、釧路駅7時43分とやや早いスタートです。
これは、この日が観光のメインの日となり、一日かけて釧網本線を釧路から網走へと縦断しつつ、途中でバスも利用して沿線を観光していくためです。
7時20分に改札前に集まった参加者たちが、団体専用列車が入線する3番線ホームに上がると、そこには釧路湿原・阿寒・摩周観光圏協議会のゆるキャラ「つるまる」と横断幕、それに観光大使の「マーメイドくしろ」が待っていました。昨夜到着時にもホームで出迎えてくださっていて、2日続けての対応です。さらに、早朝にもかかわらず、地酒「ふくつかさ」が振る舞われています。
ホーム上の乗り場案内には、「団体専用 ふれあいの旅 7:43 塔路」と表示されています。電光表示となり、こういったきめ細かい案内がされるようになったのは嬉しいことです。
やがて、この日と翌日の2日間乗ることになるJR北海道のリゾート列車「クリスタルエクスプレス」が入線します。フリースペースのある車両ですので、長時間乗車でも気晴らしに車内を移動できる点が、初日に利用したキハ283系と大きく異なるところです。やはり観光列車には、こういったリゾート列車が良いですね。
発車すると、すぐに釧路湿原の中を走ることになります。エゾシカや野鳥が車内から幾度も見ることができて、車内はいきなり歓声に包まれます。釧路湿原駅に15分停車してホームや駅前を散策したうえで、8時30分には塔路(とうろ)駅に到着しました。
釧路湿原では、釧路町の歓迎と土産物の販売がありましたが、塘路駅では標茶(しべちゃ)町のゆるキャラと横断幕のお出迎えです。
ここでバスに乗り換えて、茅沼(かやぬま)駅に向かいます。茅沼駅は、丹頂鶴がいる駅として知られていますが、相手は野生の動物ですので、いつ行っても見られるわけではありません。それが、この日は着くと4羽もいました。1羽はホームに近いところにいたのですが、いきなりバス2台分の人がわさわさと来たので、すぐにホームから遠い方向に行ってしまいました。その先には夫婦と子供でしょうか、3羽の丹頂鶴が見られます。
再度バスに乗って、900草原という小高い丘の上にある弟子屈(てしかが)町営牧場に行きますが、前夜、一時的に冬型の気圧配置となったため、草原は雪原になっていました。一同、寒さに震えながらも今冬の初雪を楽しんでから、摩周湖へ。 摩周湖は、かつてのヒット歌謡曲「霧の摩周湖」そのものの濃霧がかかり、湖はほぼ見えませんでした。
その摩周湖の近くに、渡辺体験牧場があります。ここで昼食だ…と思ったら、いきなり吹きっさらしのトレーラーに乗り、トラクターで引っ張る「トレーラー列車」で牧場一周です。途中、雪原で下車時間があり、寒風に耐えて参加者は雪を楽しみますが、次第に口数が減っていきます。
下車後に出されたジンギスカンは、美味しいことこの上ありませんでした。暖かい食べ物はありがたいものです。
渡辺体験牧場を後にして、屈斜路(くっしゃろ)湖畔の温泉湧出地である砂湯を見学、続いて硫黄山も見学したうえで、川湯温泉駅に到着です。途中で、多くの白鳥が羽を休めているところも見られました。
川湯温泉駅では弟子屈町の方々の出迎えがあり、お土産として「大鵬(たいほう)せんべい」を一人一箱いただきます。これは、昭和時代に「巨人・大鵬・玉子焼き」と呼ばれ、当時の子ども達が大好きだった大相撲横綱・大鵬関が少年時代を当地で過ごしたことに由来したお土産です。
やがて、塔路駅で下車後に回送されてきたクリスタルエクスプレスに再乗車です。入線時には雪がちらついていましたが、先にさらに寒い地に行ってきているだけに、参加者一同、さほど寒いとは言わなくなっています。
14時30分川湯温泉駅発のクリスタルエクスプレスに乗ると、さすがにバスに比べて空間的余裕が全然違うことを感じます。自席に座り続ける必要はなく、車内を歩くことができ、トイレにも自由に行けます。これが汽車旅の良さですよね。
両先頭車はパノラマタイプになっていて、中間車のうち1両はハイデッカー、もう1両はダブルデッカーとなっています。ダブルデッカーの2階は4人向かい合わせのボックス席とフリースペース、1階は個室となっています。さらに車端部にもフリースペースがあります。
列車内でくつろいでいると、すぐに下車時間となります。発車後わずか45分後となる15時15分に、知床斜里駅到着です。
跨線橋を渡ると、ホームで威勢の良い和太鼓演奏を聞かせてくれます。それが終わると、駅舎内にある観光案内センターへと誘導されました。ここで、地元の若者たちによる「しれとこ斜里ねぷた」のお囃子が実演されるのです。山車の「ねぷた」は同地に持ち込めなかったものの、近くの「道の駅」に展示してあり、実演後に見に行くことになります。
「ねぷた」は青森県弘前市に伝わる夏まつりですが、その弘前「ねぷた」を伝授されたそうです。演奏の合間に、江戸時代の弘前藩士が北方警備のために斜里にきていたことが昭和になってからわかったことなど、この地で「ねぷた」が演じられる理由を判りやすく解説してくれます。
歓迎行事は、「ゆるキャラ」「横断幕」「首長の挨拶」に加えて土産物という組合せが多かったこのツアーのなかで、その土地をアピールする点で、初日の白糠駅とともに印象に残るものでした。
少し戻りますが、川湯温泉駅を発車してから、地元の鉄道愛好家団体「MOTレール倶楽部」の方々が、車内放送を使った沿線案内をしてくださいます。同時に、車内販売もありました。鉄道旅ならではの、空間的余裕を活かしたものですね。
さらに、知床斜里駅からは網走市の観光コンパニオン「流氷パタラ」による、「ABASHIRIバル」のチケット販売もありました。
「ABASHIRIバル」は、網走市中心部の飲食店22店舗で使える共通チケットを買い、対象店で提示すると、その店毎に決めた一品とドリンク一杯を飲食できるというものです。長居せず、何店もはしごすることを前提にしたもので、3枚つづり2500円と5枚つづり3500円があります。
例えば二人連れで網走に行ったら、「ABASHIRIバル」で何軒か回ったうえで、気に入った店で締めるというような使い方もあるでしょう。今年は春・夏・秋の3回開催しているそうです。
このようにツアー2日目は、乗ったり降りたり、食べたり呑んだりしているうちに、最後の停車駅となる浜小清水駅に17時28分到着です。駅舎が道の駅になっていますが、その駅舎に入るなり柔らかいさきいかの試食がありました。これが美味い! たっぷりと詰めたさきいかが、飛ぶように売れていました。
17時56分、とっぷりと暮れた空のもと、浜小清水を発車したクリスタルエクスプレスは、今日の宿泊地である網走に向かって再び走りはじめました。
掲載日:2017年11月17日
これは、この日が観光のメインの日となり、一日かけて釧網本線を釧路から網走へと縦断しつつ、途中でバスも利用して沿線を観光していくためです。
7時20分に改札前に集まった参加者たちが、団体専用列車が入線する3番線ホームに上がると、そこには釧路湿原・阿寒・摩周観光圏協議会のゆるキャラ「つるまる」と横断幕、それに観光大使の「マーメイドくしろ」が待っていました。昨夜到着時にもホームで出迎えてくださっていて、2日続けての対応です。さらに、早朝にもかかわらず、地酒「ふくつかさ」が振る舞われています。
ホーム上の乗り場案内には、「団体専用 ふれあいの旅 7:43 塔路」と表示されています。電光表示となり、こういったきめ細かい案内がされるようになったのは嬉しいことです。
やがて、この日と翌日の2日間乗ることになるJR北海道のリゾート列車「クリスタルエクスプレス」が入線します。フリースペースのある車両ですので、長時間乗車でも気晴らしに車内を移動できる点が、初日に利用したキハ283系と大きく異なるところです。やはり観光列車には、こういったリゾート列車が良いですね。
発車すると、すぐに釧路湿原の中を走ることになります。エゾシカや野鳥が車内から幾度も見ることができて、車内はいきなり歓声に包まれます。釧路湿原駅に15分停車してホームや駅前を散策したうえで、8時30分には塔路(とうろ)駅に到着しました。
釧路湿原では、釧路町の歓迎と土産物の販売がありましたが、塘路駅では標茶(しべちゃ)町のゆるキャラと横断幕のお出迎えです。
ここでバスに乗り換えて、茅沼(かやぬま)駅に向かいます。茅沼駅は、丹頂鶴がいる駅として知られていますが、相手は野生の動物ですので、いつ行っても見られるわけではありません。それが、この日は着くと4羽もいました。1羽はホームに近いところにいたのですが、いきなりバス2台分の人がわさわさと来たので、すぐにホームから遠い方向に行ってしまいました。その先には夫婦と子供でしょうか、3羽の丹頂鶴が見られます。
再度バスに乗って、900草原という小高い丘の上にある弟子屈(てしかが)町営牧場に行きますが、前夜、一時的に冬型の気圧配置となったため、草原は雪原になっていました。一同、寒さに震えながらも今冬の初雪を楽しんでから、摩周湖へ。 摩周湖は、かつてのヒット歌謡曲「霧の摩周湖」そのものの濃霧がかかり、湖はほぼ見えませんでした。
その摩周湖の近くに、渡辺体験牧場があります。ここで昼食だ…と思ったら、いきなり吹きっさらしのトレーラーに乗り、トラクターで引っ張る「トレーラー列車」で牧場一周です。途中、雪原で下車時間があり、寒風に耐えて参加者は雪を楽しみますが、次第に口数が減っていきます。
下車後に出されたジンギスカンは、美味しいことこの上ありませんでした。暖かい食べ物はありがたいものです。
渡辺体験牧場を後にして、屈斜路(くっしゃろ)湖畔の温泉湧出地である砂湯を見学、続いて硫黄山も見学したうえで、川湯温泉駅に到着です。途中で、多くの白鳥が羽を休めているところも見られました。
川湯温泉駅では弟子屈町の方々の出迎えがあり、お土産として「大鵬(たいほう)せんべい」を一人一箱いただきます。これは、昭和時代に「巨人・大鵬・玉子焼き」と呼ばれ、当時の子ども達が大好きだった大相撲横綱・大鵬関が少年時代を当地で過ごしたことに由来したお土産です。
やがて、塔路駅で下車後に回送されてきたクリスタルエクスプレスに再乗車です。入線時には雪がちらついていましたが、先にさらに寒い地に行ってきているだけに、参加者一同、さほど寒いとは言わなくなっています。
14時30分川湯温泉駅発のクリスタルエクスプレスに乗ると、さすがにバスに比べて空間的余裕が全然違うことを感じます。自席に座り続ける必要はなく、車内を歩くことができ、トイレにも自由に行けます。これが汽車旅の良さですよね。
両先頭車はパノラマタイプになっていて、中間車のうち1両はハイデッカー、もう1両はダブルデッカーとなっています。ダブルデッカーの2階は4人向かい合わせのボックス席とフリースペース、1階は個室となっています。さらに車端部にもフリースペースがあります。
列車内でくつろいでいると、すぐに下車時間となります。発車後わずか45分後となる15時15分に、知床斜里駅到着です。
跨線橋を渡ると、ホームで威勢の良い和太鼓演奏を聞かせてくれます。それが終わると、駅舎内にある観光案内センターへと誘導されました。ここで、地元の若者たちによる「しれとこ斜里ねぷた」のお囃子が実演されるのです。山車の「ねぷた」は同地に持ち込めなかったものの、近くの「道の駅」に展示してあり、実演後に見に行くことになります。
「ねぷた」は青森県弘前市に伝わる夏まつりですが、その弘前「ねぷた」を伝授されたそうです。演奏の合間に、江戸時代の弘前藩士が北方警備のために斜里にきていたことが昭和になってからわかったことなど、この地で「ねぷた」が演じられる理由を判りやすく解説してくれます。
歓迎行事は、「ゆるキャラ」「横断幕」「首長の挨拶」に加えて土産物という組合せが多かったこのツアーのなかで、その土地をアピールする点で、初日の白糠駅とともに印象に残るものでした。
少し戻りますが、川湯温泉駅を発車してから、地元の鉄道愛好家団体「MOTレール倶楽部」の方々が、車内放送を使った沿線案内をしてくださいます。同時に、車内販売もありました。鉄道旅ならではの、空間的余裕を活かしたものですね。
さらに、知床斜里駅からは網走市の観光コンパニオン「流氷パタラ」による、「ABASHIRIバル」のチケット販売もありました。
「ABASHIRIバル」は、網走市中心部の飲食店22店舗で使える共通チケットを買い、対象店で提示すると、その店毎に決めた一品とドリンク一杯を飲食できるというものです。長居せず、何店もはしごすることを前提にしたもので、3枚つづり2500円と5枚つづり3500円があります。
例えば二人連れで網走に行ったら、「ABASHIRIバル」で何軒か回ったうえで、気に入った店で締めるというような使い方もあるでしょう。今年は春・夏・秋の3回開催しているそうです。
このようにツアー2日目は、乗ったり降りたり、食べたり呑んだりしているうちに、最後の停車駅となる浜小清水駅に17時28分到着です。駅舎が道の駅になっていますが、その駅舎に入るなり柔らかいさきいかの試食がありました。これが美味い! たっぷりと詰めたさきいかが、飛ぶように売れていました。
17時56分、とっぷりと暮れた空のもと、浜小清水を発車したクリスタルエクスプレスは、今日の宿泊地である網走に向かって再び走りはじめました。
掲載日:2017年11月17日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。