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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

今だけ見られる駅新設工事の様子…小田急世田谷代田駅 [No.H274]

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小田急の駅ホームとしては珍しく質素な床張り。しかし、仮設ホームとしてみると、なかなか立派だ。
小田急電鉄は、3月17日にダイヤ改正を予定しています。
このダイヤ改正は規模の大きなものとなります。それは、代々木上原~登戸間11. 7kmのうち11. 1kmの複々線化が完成するためです。
小田急の列車本数は、かねてから運転本数の限界に近い状態であることが知られています。それだけに全線複線時代には、前を走る列車が後続の列車内から見えてしまうことが珍しくありませんでした。この状況では、速度も抑えられてしまいます。その状況を一気に解決するダイヤ改正だけに、同時に登場する新型ロマンスカーGSEすら影が薄く感じられるほどです。
いま、複々線化されていないのは、東北沢~下北沢~世田谷代田~梅ヶ丘間2. 1kmのうち約1. 6kmだけとなりました。この区間は、梅ヶ丘以西と同じく高架複々線化を予定していたのですが、沿線住民からの強い要望をうけて地下化することになったため、工事に時間がかかっていました。
地下工事はまず複線分が完成し、2013年3月23日に地上を走っていた線路を地下に移行することで、9カ所の踏切を廃止しています。その地下線は、地下2階にあり、複々線化の際には、急行線として使用することになっています。そのため、急行停車駅ではない東北沢駅と世田谷代田駅には、5年間限定の仮設ホームが設けられました。
右上の写真は、その世田谷代田駅の下りホームです。床の様子や、飾り気のない天井などは、とても小田急の駅とは思えないものです。でも、仮設としてみると、ずいぶん立派なホームだと思ってしまいます。


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工事が進む緩行線ホーム。線路を渡る通路は、仮ホームに向かうエレベーター用で、世田谷代田駅利用者が行き来するもの。
地下の複々線は、急行線を「地下2階」と記した通り、工事が進む緩行線が地下1階に位置しています。そのため、駅利用者は地下2階と改札階を行き来するのに、地下1階を通ることになります。そこは工事中の場所ですので、通常は非公開の工事現場を見ながら改札階と地下2階を行き来することになるわけです。
珍しい光景が見られるわけですが、さらに世田谷代田駅が珍しいのは、使用開始前の緩行線の線路を跨ぐ仮設橋を渡ったところに、地下2階の仮設ホームへと続く階段とエレベーターがあることです。
左上の写真は、階段へと続く仮設橋から、エレベーターへと続く仮設橋を撮ったものです。駅利用者がここを渡るのですから、珍しいですよね。レールは既に敷かれ、信号機も点灯しています。その先で線路が地上に出ていますが、地上にでたところで、すでに営業している複々線区間となります。
この写真では、ホームの様子がしっかりとは分からないものの、それでも床も壁も天井も、冒頭に紹介した仮設ホームのそれとは大きく違い、費用をかけたものであることが分かると思います。
複々線化が完成する3月17日のダイヤ改正では、もちろんこの仮設橋は撤去されますので、仮ホームに向かう階段もエレベーターも利用できなくなり、その入口も塞がれてしまうようです。


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世田谷代田駅の改札階に設けられている「小田急環境ルーム」。自由に見学ができるほか、申込制でガイヅツアーにも参加ができる。
世田谷代田駅の改札階には、右の写真の「小田急環境ルーム」があります。小田急電鉄が昨春に開設した、動画や模型により同社の環境の取り組みを紹介するスペースです。
間もなく完成する地下トンネルの概要や、トンネルを掘るシールドマシンの模型、世田谷代田駅の模型など、複々線化のための地下トンネルについて知ることもできます。もちろん、環境のPRスペースとして、ブレーキ力を電気に変えて省エネをしている回生ブレーキの模型や、防音車輪と通常車輪の比較なども見られるようになっています。
さらに詳しくこのスペースの内容を知りたい向きには、毎月5日ほどガイドツアーが実施されています。土曜日に開催されることもありますが、平日が多く、時間は平日だと15時~16時30分の1回開催、土曜日には10時30分~12時と14時~15時30分の2回開催です。参加費は無料ですが、一週間前までの申込みが必要です。また、最大で10名までとなっています。詳しくは、小田急電鉄のサイトをご覧下さい。

以上、3月17日のダイヤ改正まで見られる、珍しい光景を紹介しました。
同改正では、ラッシュ時の上り列車運転本数が27本から36本に増えるため、混雑率のピークが192%から150%程度に緩和される見込みということです。同時にスピードアップも実現し、小田急多摩センター~新宿間が最大で14分、町田~新宿間が最大で12分も短縮されるそうです。
複々線の効果の大きさを実感できるダイヤ改正となりそうですね。


掲載日:2018年02月23日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。