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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

今春登場する、首都圏で注目の新型車両たち [No.H276]

毎年、年度替わりに合わせて新車が多く登場しますが、今年は注目の車両が首都圏に集中しています。その代表格として、相模鉄道20000系、京王電鉄5000系、小田急電鉄GSE(70000系)を今回ご紹介します。

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将来の東急東横線乗り入れ用に新製された、相模鉄道20000系。前面デザインが特徴的で、いま注目の的。
相模鉄道は、横浜を起点に二俣川を経て海老名までの本線と、二俣川で分岐して湘南台までのいずみ野線の2線を有しています。つまり、横浜と神奈川県の内陸部を結ぶ路線です。沿線から都心に出るには、横浜でJRや東急に乗り換えるか、湘南台・大和・海老名で小田急線に乗り換えることになります。
その相模鉄道で、いま大きな流動の変化を目指した工事が進んでいます。横浜を経由しないで、都心に直通するルートを造っているのです。
二俣川から2駅横浜寄りにある西谷近くから分岐して、約2. 7kmの新線が完成すると、JRの横浜羽沢貨物駅に到達します。この付近に羽沢横浜国大駅を作るとともに、JR線に乗り入れて都心に向かうのです。平成31年度下期の開業予定ですので、あと2年ほどです。
この新設する羽沢横浜国大から、さらに約10. 0kmの新線もつくります。東急東横線の日吉に接続して東急線に乗り入れることで、都心に直通する構想です。平成34年度下期の開業予定ですので、あと5年ほどでこちらも開業予定です。
JR乗り入れ列車はラッシュ時間帯に1時間4本程度、東急乗り入れ列車はラッシュ時に1時間10-14本の予定ということですから、横浜を中心とした相模鉄道の輸送体系が根本的に変わることになります。
その東急線直通用に造られたのが、この20000系です。YOKOHAMA NAVYBLUE という濃い青色の車体は、正面デザインとともにインパクト充分です。車内も時間帯で色が変わるLED照明、座り心地の良いモケット形状の座席など、快適な通勤電車を目指して作られたことがわかります。
週末には、停車中に電車の前方で20000系をバックに記念写真を写す家族連れの姿が見られるほど、沿線の利用者から注目されています。


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京王線初の着席サービス「京王ライナー」のために新造された5000系。ライナー時にはクロスシートになる。
京王電鉄は、左の写真の5000系を新造しました。
この車両は、座席が通常ロングシートなのですが、座席指定サービスを行う「京王ライナー」として運行するときには、2席ずつ動いてクロスシートになります。近鉄L/Cカーや東武TJライナーと同じような構造の座席です。
このため、5000系は通常一般の列車に使用されていますが、夕刻以降に新宿を発車する「京王ライナー」ではクロスシートのサービス提供をするということになります。
昨年9月から順次一般列車に投入されてきた5000系ですが、編成が出そろった今年2月22日にダイヤ改正を行い、「京王ライナー」が走りはじめました。
「京王ライナー」は夕刻以降の新宿発だけという、帰宅時のサービスとしています。平日の場合、20時から毎時1本0時発まで計5本の京王八王子行と、20時30分から毎時1本、最終だけ0時20分という計5本の橋本行があります。
土休日は京王八王子行が17時から、橋本行が17時20分から各毎時1本で、各々5本の運転というのは、平日と同じです。
着席サービスだけに、利用者の多い駅でも新宿から近いと通過します。実際には運転停車をするものの扉扱いをしないのですが、井の頭線との乗換駅の明大前や、京王線と相模原線の分岐駅となる調布すら通過するのです。新宿の次に停まるのは、京王八王子行の場合が府中、橋本行は京王永山です。この最初の停車駅から先は、座席指定券が不要となります。
座席指定料金は400円ですが、座席指定券を持たずに乗車すると、車内精算料金は700円になります。このあたりは、事前購入が割安な東京近郊のJR快速列車の自由席グリーン車と同じやり方ですね。


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試運転中の、小田急の新形ロマンスカー70000形。愛称“GSE”は「Graceful Super Express」の略
小田急電鉄を代表するロマンスカーにも新車が登場します。
これまでに取り上げてきた2例はすでに営業運転をしているのに対して、小田急の新形ロマンスカーは、3月17日のダイヤ改正から営業運転を始めます。
展望席をもつ、小田急伝統のロマンスカーの形態を踏襲した70000形で、愛称は“GSE”です。「Graceful Super Express」の略で、Graceful…つまり優雅な車両ということで、期待が持てます。
小田急のロマンスカーとしては、2008年に登場した地下鉄直通車60000形“MSE”以来10年ぶりとなる新形ですが、前面展望に対応する小田急電鉄のシンボル的ロマンスカーとしては、2005年に登場した50000形“VSE”以来13年ぶりとなります。
“VSE”はシルキーホワイトの塗装で斬新さを感じましたが、“GSE”は小田急ロマンスカー伝統のバーミリオンオレンジが基調となっていて、見るからに小田急のロマンスカーであることを感じさせるものとなっています。
それでいて、ロマンスカー最大となる高さ1メートルもの連続窓で車窓の眺望を提供し、車体の揺れを抑える電動油圧式フルアクティヴサスペンションの採用や、車内でWi-Fiサービスを提供するなど、最新技術を惜しみなく投入しています。
さらに、同車の就役に合わせて、ロマンスカーの乗務員とロマンスカーアテンダント全員の制服を一新するほどの力の入れようです。

いずれも、乗ってみたくなる車両達ですよね。
相模鉄道20000系も、小田急電鉄“GSE”も、ホームページでどの列車に充当されるかが判ります。京王電鉄は、夜になってしまいますが「京王ライナー」に乗りたいですよね。
暖かくなった昨今、春の訪れを感じるために、新車体験に出かけてみてはいかがでしょうか?


掲載日:2018年03月09日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。