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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

青函トンネル開通から30年…北斗星・白鳥から新幹線へ [No.H277]

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青函トンネル完成により津軽海峡線が開業すると、その象徴となる寝台特急「北斗星」が走りはじめた。
3月13日で、青函トンネルを含む津軽海峡線が開通してから30年となりました。
1954(昭和29)年9月26日に台風で遭難した洞爺丸事故をうけて、その必要性が認識された青函トンネルです。しかし難工事となって、完成まで実に33年半を要しました。
待望の青函トンネル完成でしたが、青函連絡船の輸送ピークは1973年(昭和48)年のことで、津軽海峡線が開業する頃には、すでに北海道の玄関口は函館から千歳空港に移っていました。このため、せっかく完成した青函トンネルでしたが、待望論とともに不要論も絶えない状況でした。
前年発足したばかりのJR東日本とJR北海道は、青函トンネルの有用性をアピールする、象徴的な列車として豪華寝台特急を登場させます。「北斗星」です。
当時、ブルートレインは人気であったものの、航空機の発達と国民生活のレベル向上により、利用者数は減少しはじめていました。その対応として、JR各社は寝台車の個室化やフリースペース「ロビーカー」の設置など、何かと工夫をしていました。しかし、個室寝台はA寝台車ばかりで、B寝台車の個室は2人用のデュエットか4人用のカルテットしかありませんでした。
また、寝台列車に連結される食堂車も、東海道本線を走る九州・山陰へのブルトレだけとなっていました。
そこへ、個室主体で食堂車も連結された寝台特急「北斗星」が登場したのです。しかも、食堂車は予約制で3000~7000円の洋食3種、和食1食という高級志向です。
ちょうど、バブル経済で世の中が浮かれていたときでしたので、北海道へ行くなら「北斗星」で…と、いきなり「青函トンネルを通過する北斗星」は、ブームになったのでした。実際、当時は寝台券がなかなか入手できず、筆者も手を尽くして乗車した記憶があります。
この成功を後追いして登場したのが、JR西日本の豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」でした。


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青函トンネルを抜けて本州に躍り出た特急「スーパー白鳥」789系0番台。新幹線八戸開業を機に登場した。
津軽海峡線が開業した30年前は、東北新幹線がまだ盛岡までしか開業していませんでした。このため新幹線接続列車として、盛岡~函館間に特急「はつかり」が運転されていました。また、青森~函館間には快速「海峡」、夜行として「はまなす」が青森~札幌間に設定されました。奥羽本線からは、寝台特急「日本海」も津軽海峡線を走って函館まで1往復していました。
2002(平成14)年12月1日に東北新幹線が八戸まで延伸すると、特急「はつかり」は廃止となり、新幹線接続特急は函館までの「白鳥」と青森・弘前までの特急「つがる」となります。
このとき、JR北海道が意欲的な特急電車をデビューさせました。「スーパー白鳥」として走ることになる789系0番台です。JR北海道のコーポレートカラーである萌黄色の正面とシャープなデザインの同車は、北の大地への憧れを感じさせるものでした。
JR東日本が「はつかり」で使用していた国鉄型485系を使って走らせる特急「白鳥」は、「スーパー白鳥」と差がでてしまうことから、改造して居住性を良くした3000番台を造りました。しかし、乗るならJR北海道の789系0番台がいいと思ったものでした。
いまから2年前となる2016(平成28)年3月26日には、津軽海峡線を使う北海道新幹線が開業しました。これで職場がなくなった789系0番台は道南から道央へと移動し、札幌~旭川間の特急「ライラツク」として活躍を続けています。


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新幹線と貨物列車が同じ線路を走るようになった津軽海峡線。上はJR北海道のH5系、下はJR貨物のEH800形。
北海道新幹線は、青函トンネル内とその前後の区間で津軽海峡線を使っています。ただし、当該区間は貨物列車も走ることから在来線の1067mm軌間と、新幹線の1435mm軌間が一方のレールを共用する3線区間としています。このため、途中に踏切がないにもかかわらず在来線の扱いとなってしまい、新幹線ならではの高速運転ができない状態です。
青函トンネルそのものは新幹線用に造られていますので、いかに高速運転をするかが課題となっています。
この区間はいま、JR東日本のE5系新幹線車両とJR北海道のH5系新幹線車両、それにJR貨物のEH800形電気機関車が牽引する貨物列車が走っています。
このうち貨物列車が走らない時間帯を設けて、新幹線ならではの高速運転をすることが考えられていますが、貨物列車が多く通過する区間ですので、高速運転ができる時間は限られてしまいます。
貨車を車体の大きな新幹線の中に入れてしまう方式も提案されていますが、重心が高くなるなど、技術的に難しいようです。イギリスとフランスを結ぶユーロトンネルなどでは、乗用車はもちろんのことトラックも列車に乗せて走らせるサービスがあり、これも検討されてきましたが、なかなか実現しないようです。
この先、北海道新幹線が札幌まで延伸することになっています。それまでに問題を解決して、旅客はもちろんのこと、貨物列車も新幹線ならではのスピードで走るようになることを期待したいところです。


掲載日:2018年03月16日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。