日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「「天空にいちばん近い列車」が走りはじめた小海線」

[ ここから本文です ]

汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

「天空にいちばん近い列車」が走りはじめた小海線 [No.H252]

イメージ
クリックして拡大
7月1日に走りはじめた小海線の観光列車「HIGH RAIL 1375」。今夏は超人気で予約がしづらかった。
小海線は、山梨県の小淵沢駅と長野県の小諸駅を結ぶ78.9kmの路線です。
小淵沢駅を発車するとすぐに上り勾配となり、雄大な築堤上のカーブでは、晴れていれば富士山も眺められます。その先も上り勾配が続き、山梨県最後の駅となる清里駅と、次の長野県最初の駅となる野辺山駅のあいだで普通鉄道としては日本一高い標高1375mの地点を通過します。
このあいだは八ヶ岳を車窓から眺められることもあり、かねてから高原列車と呼ばれてきました。JR東日本も八ヶ岳高原線の愛称をつけています。
その小海線に、今年7月1日に新型観光列車「HIGH RAIL 1375」が走りはじめて人気です。列車名は、標高が高い線路で、標高1375mの地点を通過するところから名付けられました。「天空にいちばん近い列車」とJR東日本は宣伝しています。
2両編成で、小諸駅側の2号車はリクライニングができるクロスシート車です。小淵沢駅側の1号車は、通路を挟んで左右それぞれが窓側に向いた座席配置で、小諸に向かって右側がペアシート、左側がシングルシートとして、それぞれ二人掛け座席と一人掛け座席が配置されています。また、車端部には4人グループ用のBOXシートもあります。
全車指定席で、指定席券は通年おとな820円、こども410円です。
予約状況をみると、7-8月は火曜日以外毎日運転だったにもかかわらず、ほとんどの列車が売り切れの状態でした。9-11月は金・土・日・祝日、12-3月は土・日・祝日の運転となりますので、まだしばらく予約が取りにくい状況が続きそうです。
列車は1日1往復半あり、時刻は次の通りです。
    HIGH RAIL   1号     小淵沢10:30→12:31小諸 ※冬季は運転しない
  HIGH RAIL   2号   小淵沢16:54←14:22小諸
  HIGH RAIL   星空   小淵沢18:20→21:51小諸
各列車にはそれぞれオプションがあります。
    HIGH RAIL   1号     ブランチセット 2,500円
  HIGH RAIL   2号   オリジナルスイーツセット 1,500円
  HIGH RAIL   星空   オリジナルグッズと特製弁当 3,000円
これらは、指定席を予約できた場合に限り、「えきねっと」でWeb予約ができるようになっています。


イメージ
クリックして拡大
普通鉄道で最高地点にある駅として知られる野辺山駅は、星空がきれいなことでも知られる地にある。
「HIGH RAIL 1号」「同2号」は全区間の所要時間が2時間~2時間半ですが、「HIGH RAIL 星空」だけは3時間31分も要しています。これは野辺山駅で1時間強停まり、そのあいだに星空案内人による「星空観察会」が行われるためです。
野辺山は、天文学者が選ぶ「日本で一番綺麗な星空ベスト3」に選ばれた地だそうです。これから秋本番となり、空気がさらに澄んできます。きっと素晴らしい夜空が眺められることでしょうが、なにせ高原です、夜間の冷え込みに備えて暖かい服装で行く必要がありそうです。

その野辺山駅は、鉄道の最高地点となる1375mからは少し低いというものの、標高1345.67mの地にあります。駅舎前には「JR最高駅 野辺山 標高一三四五米六七」と記した立派な看板が掲げられています。
また、2種類ある駅名標の一方には星空が描かれ、もう一方には国立天文台野辺山の電波望遠鏡の写真が使われています。ここでも、星空自慢の野辺山が感じられますよね。


イメージ
クリックして拡大
世界初のハイブリッド車両キハE200形は、2007年から小海線で走っている。
小海線に行くなら、「HIGH RAIL 1375」とともに「キハE200形」にも乗ってみたいところです。
「キハE200形」は世界初のハイブリッド鉄道車両として、2007年7月31日から小海線で走っています。そのため「こうみ」という愛称がつけられています。
同車のハイブリッドは、ディーゼルエンジンと蓄電池の組み合わせです。トヨタのプリウスで代表されるハイブリッドと同じく、エンジンで発電をしてモーターを回すことで動きます。惰行で走る際などに余る電気は蓄電池に溜めておき、発車時や加速する際に使います。一方、ブレーキはモーターで電気を発生させて抵抗とします。車のエンジンブレーキのようなものです。その発生した電気も蓄電池に溜めておき、加速時に使用するというエコな車両なのです。
今年でデビュー10周年を迎えた「こうみ」ですが、その成果は五能線を走る「リゾートしらかみ」HB-E300系や、仙石東北ラインを走るHB-210系といった“後輩”として日の目をみています。
さらに、国鉄時代に大量生産されたキハ40系の後継車として、JR東日本とJR北海道が導入を予定している新型車両は、ハイブリッドではないものの電気式ディーゼルカーになるということですから、この「キハE200形」の使用経験を活かしているものと推測されます。
キハE200形「こうみ」を使用する列車は、時刻表に「ハイブリッド車両で運転」と注記されていますので、誰でも知ることができます。実際に乗ってみると、発車時の静かさがとてもディーゼルカーとは思えないもので、感心しますよ。


掲載日:2017年09月08日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。