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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

猫が大出世する和歌山電鐵 [No.H020]

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猫の顔になった貴志駅舎。
屋根上には「TAMA」の文字も見られる。
中には、たまカフェもあってくつろげる。
ここ数年、動物駅長が全国に多く登場しました。
猫・うさぎ・ペンギン・カメ・エビなどなど…
その一大ブームの発端は、和歌山電鐵のたま駅長でした。
昨年後半には、生命保険のテレビCMにも出演しましたので、ご存知の方も多いことと思います。

和歌山電鐵は、南海電鉄貴志川線として運行されていました。しかし、赤字路線として廃止されることになった際、沿線住民が立ち上がって存続させた鉄道です。
存続するにあたって協力したのは、岡山に本社がある両備グループの小嶋社長でした。同グループはバス部門が主体で、岡山電気軌道という路面電車もありますが、鉄道線は初でした。存続に協力したのは、地元の熱意があったからと小嶋社長は記されています。

その和歌山電鐵の看板娘となった三毛猫の「たま」は、貴志駅に隣接する商店の飼い猫です。飼い主から貴志駅に置いて欲しいと要望された小嶋社長が、駅長にと閃いたということです。
駅長になった「たま」に対して駅長帽を新調し、貴志駅に駅長室を設け、たま駅長のイラストでいっぱいの「たま電車」を登場させ、ついには貴志駅まで猫顔になり、駅内にも「たまカフェ」という喫茶店ができるなど、和歌山電鐵はたま駅長という看板で成り立っているような状況となりました。
実際、和歌山電鐵になった頃は閑散としていた貴志駅が、数年経つと、いつでもたま駅長目当ての観光客がいる状態になったほどです。

それだけ貢献している「たま駅長」ですから、どんどん出世します。和歌山電鐵が「スーパー駅長」と任命すると、和歌山県は“わかやまでナイト”の称号を与えます。さらに「執行役員スーパー駅長」に昇格し、和歌山県からは“まねき大明神”と神様に祭り上げられました。
昨年には、「部下」として伊太祈曽(いだきそ)駅に、三毛猫のニタマ駅長が就任しました。岡山で拾われた捨て猫ということですが、タマに似た、二匹目の駅長ということでニタマと命名されたそうです。
そして、今年1月5日に、たま駅長はまたまた昇進辞令を受け取りました。その新たな肩書きは…
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社長代理辞令授与式でのたま駅長
白いカツラは、ナイトとしての正装。
小嶋社長に抱かれて大人しいが、
辞令が交付されると一言“ニャー!”


  社長代理  

です。

小嶋社長は岡山を拠点にされていますので、和歌山電鐵では非常勤です。つまり、和歌山電鐵の現場としては、トップがたま駅長。それ以外の社員は、全部部下ということになります。ずいぶんと可愛いトップですよね(笑)
しかし、これほどの大出世をする猫は、ほかにいないでしょう。

昇進辞令には、小嶋社長だけでなく、和歌山県知事や地元の紀の川市長と和歌山市長も駆けつけ、地元マスコミも大集合しました。一般の方も200名ほどでしょうか、貴志駅前に集まりました。
式典では、たま駅長はナイトの正装をし、小嶋社長に抱かれて登場。もちろん駅長帽も被っています。辞令交付後には、部下のニタマから花かつおのプレゼントも受け取りました。

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たま駅長のイラストがこれでもかと描かれている
人気の「たま電車」。
検査が終わる3月5日から再び走り出す予定だ。



ますますご活躍のたま駅長ですが、今月は、昇進祝いなのか臨時休暇をもらっています。代わって、ニタマ駅長が貴志駅に勤務する日が多くなっています。また、「たま電車」は3月4日まで検査で運転していません。
ですからですから、訪れるなら温かくなってからの方が良いようですよ。



掲載日:2013年01月11日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。