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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

北陸新幹線金沢延伸で誕生する4つの第三セクター鉄道 [No.H128]

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北陸新幹線長野~金沢間開業で、3月14日には4社5路線の第三セクター鉄道が誕生する
3月14日のダイヤ改正では、北陸新幹線長野~金沢間の開業が注目を浴びています。その一方で、同日から国鉄~JRと長年にわたって幹線として活躍してきた、信越本線と北陸本線の一部が"並行在来線"として廃止になり、代わって沿線自治体が出資する第三セクター鉄道となります。これまでにも、新幹線延伸のたびに並行在来線は廃止となり、多くは沿線自治体による第三セクター鉄道として生まれ変わっています。しかし、今回のように、一気に4社もの第三セクター鉄道が誕生するのは初めてのことです。
これは、今回の開業区間が、長野県・新潟県・富山県・石川県と4県にまたがっていることが原因です。県境を跨いで一体運営をする肥薩おれんじ鉄道のようなケースもありますが、経営判断が分かれた場合に折り合いを付けるのが難しいなど、県別に経営をした方が開業後にやりやすくなるケースが多いようです。一方、県別にすると県を跨ぐと別の鉄道会社になるため、新たな初乗り運賃が必要となって割高となるなど、利用者にとって必ずしもメリットだけとはならないところが難しいところです。
その並行在来線の様子をまとめてみたのが上の図です。長野から金沢に向かって、信越本線~北陸本線が4社5路線になることをご理解いただけると思います。このうち、長野~妙高高原間を引き継ぐ「しなの鉄道」は、長野新幹線開業時に軽井沢~篠ノ井間の並行在来線を引き継いでできた第三セクター鉄道で、今回、その路線長が伸びることになります。また、長野を挟んで2路線となることから、これまでの軽井沢~篠ノ井間を「しなの鉄道線」と呼ぶこととするとともに、新たに加わる長野~妙高高原間8駅37.3kmは、「北しなの線」と呼ぶことになりました。両線を合わせると102.4kmと、営業キロが100kmを越える第三セクター鉄道となります。
なお車両は、これまでも主力として活躍している国鉄形115系直流電車を、増備して使用します。


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えちごトキめき鉄道妙高はねうまラインに投入される、JR東日本のE127系。
妙高高原から直江津を経て市振(いちぶり)まで98.3kmは、新潟県となります。この区間は、えちごトキめき鉄道となります。ところが、現信越本線の妙高高原~直江津間は直流1,500Vなのに対して、現北陸本線の直江津~市振間は、直江津~糸魚川間が直流1,500V、糸魚川~市振間が交流20,000Vと電化方式が異なっています。人の流れは直江津で分かれるため、両線の運行系統を分けて、妙高高原~直江津間を「妙高はねうまライン」、直江津~市振間を「日本海ひすいライン」という路線名にしました。
「妙高はねうまライン」には、これまでJR東日本が新潟地区の普通列車として使用していたE127系10編成を譲り受けます。また、JR東日本が新設する新幹線連絡特急「しらゆき」5往復と新潟直通の快速2往復が入線します。いま、新潟~金沢間を走っている特急「北越」と、新潟~新井間を走っている快速「くびき野」を引き継ぐ列車といえましょう。
さらに、北越急行が直江津~新井間に1往復乗り入れてきます。その新井行は、北越急行が特急「はくたか」廃止後の目玉としている、超快速列車「スノーラビット」です。越後湯沢~直江津間で停車するのは十日町だけで、所要は下り57分上り58分と、現状の最速列車より10分はやく、平均では約30分もはやくなります。
妙高はねうまラインのうち直江津~高田~新井間は、沿線人口が多く、通勤通学利用も多い区間だけに、なかなか賑やかになりそうです。


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姫新線を走るキハ122。この車両をベースにした新車が、えちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインに投入される。
同じえちごトキめき鉄道でも、日本海ひすいラインはかなり様相が異なります。前述のとおり、この路線は途中で電化方式が直流から交流に変わります。これまで、この区間には交直両用電車が使われていました。ところが、交直両用電車はその設備のため割高な車両となります。一方、この路線は沿線人口が多くなく、利用者数を多く見込めません。そこで、えちごトキめき鉄道は敢えて気動車(ディーゼルカー)を投入することにしました。いま、JR西日本姫新線で活躍しているキハ122をベースにした車両を、10両新製します。
このうち8両を通常運行に利用し、2両はリゾート列車となるとのことで、リゾート列車については愛称名が公募されました。同列車の詳細はいまのところ未発表ですが、えちごトキめき鉄道の全線にわたって走るものと予想されます。
なお、気動車が走るものの、貨物列車が日本海縦貫線として多く行き来する区間ですので、電気機関車のために今後も電化区間であり続けます。これは、肥薩おれんじ鉄道と同じパターンとなります。
ところで、えちごトキめき鉄道は富山県境手前の市振までですが、県境を越えて、あいの風とやま鉄道の泊まで走ります。同駅で、あいの風とやま鉄道の列車と乗換となるわけです。一方、あいの風とやま鉄道の列車も、2往復が糸魚川まで乗り入れてきます。


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あいの風とやま鉄道と、IRいしかわ鉄道の主力車両となる、JR西日本の521系交直両用電車。
あいの風とやま鉄道は、北陸本線のうち富山県内となる越中宮崎~石動(いするぎ)間98.7km19駅を営業します。前述した、えちごトキめき鉄道が乗り入れてきて、乗り換え駅となる泊駅は、越中宮崎駅のひとつ西側の駅となります。
この区間は、入善・黒部・魚津・滑川・富山・高岡と大きな町が続いていますので、鉄道利用が旺盛です。これまでは特急街道だっただけに、普通列車の増発が厳しかったのですが、新幹線の開業で特急列車がなくなり、普通列車の増発が可能となります。それだけに、従来の第三セクター鉄道のイメージとは異なる、積極経営が期待されます。
いま発表されている内容としては、普通列車の増発に加えて、平日の朝晩に泊~金沢間を「あいの風ライナー」が走るということです。全車指定席の快速列車で、乗車券のほかにライナー券300円が必要となります。このように、県境を越えてIRいしかわ鉄道の金沢駅まで乗り入れますが、それだけ、富山~高岡~金沢はひとの動きがあるのです。
一方のIRいしかわ鉄道は20.6km5駅ですが、富山~津幡(つばた)間はJR西日本七尾線の列車も走ることから、純粋にIRいしかわ鉄道だけというのは、津幡~倶利伽羅(くりから)の一駅間だけとなります。このため、七尾線の列車以外はあいの風とやま鉄道の富山まで乗り入れます。車両も、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道はともに、いま北陸本線に大量投入されている521系交直両用電車を譲受もしくは新製します。開業時に、あいの風とやま鉄道には、413系国鉄形電車が5編成在籍する予定ですが、これは521系増備につれて廃車となり、車両形式が統一される見込みです。

以上、並行在来線を受け継ぐ4つの第三セクター鉄道について、いま判る範囲をまとめて記しました。北陸の鉄道地図が大きく変わる3月14日のダイヤ改正は、楽しみですよね。


★ツアー情報★
⇒2015年3月14日(土)出発限定!くびき野レールパーク&えちごトキめき鉄道訪問の旅2日間
こちらもチェック!ツアーで訪問する駅に関連するコラム  >>筒石駅  >>糸魚川駅

掲載日:2015年02月27日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。