日本旅行 トップ > JR・新幹線+宿泊 > 鉄道の旅 > 汽車旅ひろば > ひろやすの汽車旅コラム 「江差線廃線跡の“道南トロッコ鉄道”を楽しむ」

[ ここから本文です ]

汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

江差線廃線跡の“道南トロッコ鉄道”を楽しむ [No.H247]

イメージ
クリックして拡大
爽快な気分が味わえるトロッコは、いつどこで乗っても楽しく気持ちが良いが、それが北海道とあればなおさらだ。
“道南トロッコ鉄道”をご存じでしょうか。
道南いさりび鉄道と北海道新幹線の木古内駅から約2キロ西に位置する、旧江差線・渡島鶴岡駅跡を基点にトロッコ車両を楽しむことができる施設です。
江差線のうち五稜郭~木古内間は、昨年の北海道新幹線開業を受けて第三セクター鉄道「道南いさりび鉄道」となりました。そこを走る観光列車「ながまれ海峡号」については、当コラムで6月23日から7月14日まで4回にわたって紹介したところです。
江差線は、線名のとおり木古内から渡島半島を横断して、日本海側のまち江差までつながっていました。しかし、人の流れと一致しないことから、2014年5月12日に木古内~江差間が廃止されています。その現役時代については、次の2回に分けて取り上げています。
   2013年8月2日 鉄道で行くこだわり温泉-江差線湯ノ岱温泉
   2014年4月18日 江差線木古内~江差間の廃止が秒読み段階に…
その廃線跡を活用したトロッコ体験施設が、今回紹介する“道南トロッコ鉄道”です。ご覧の通り、緑に覆われた大地を軽快に走ることができます。


イメージ
クリックして拡大
終点「キーコの郷」駅で一旦下車。休憩している間に、トロッコは方向転換をして戻ってきてくれる。
道南トロッコ鉄道は、旧・渡島鶴岡駅から上下いずれの方向にもトロッコを走らせることができるものの、木古内駅側は約500メートルで北海道新幹線との交点になるため、こちらは期間限定での運行としています。
そのため、シーズン中のメインは、木古内駅とは反対の江差駅側へ約1キロの地点にある「キーコの郷」までの往復です。「キーコ」は、はこだて和牛をモチーフにした木古内町の公式キャラクターの名前です。
その「キーコの郷」までの往路はわずかに上り勾配となっているので、トロッコとして使用している軌道自転車・快速「折鶴」2両を、エンジン付の急行「キーコ」で推していきます。つまり、往路はトロッコに乗って景色を楽しんでいるうちに、終点まで行けてしまいます。ラクチン!
「キーコの郷」には枕木を敷き、駅名標があります。ここで一旦下車です。傍らに記念スタンプがあるので、押したりして楽しんでいる間に、掛の方が少し先までトロッコを回送したうえで、1両ずつ転回して復路の方向にしてくれます。その復路方向のトロッコがやってくると、いよいよ自走スタートです。
掛の方は先に行かれますので、その後にゆっくりと漕ぎはじめます。といっても、わずかな下り勾配なので、懸命に漕ぐ必要はなく、なかなか軽快に進みます。景色を楽しみ、美味しい空気を楽しんで…とやっていると、あっという間に旧・渡島鶴岡駅ホームが残る起点の鶴岡公園駅に到着です。


イメージ
クリックして拡大
受付は、旧・渡島鶴岡駅の待合室。後方に江差線時代のホームが残っていて、ここがトロッコの起点となっている。
道南トロッコ鉄道は、4月中旬から11月中旬までの土休日を中心に、8月上旬は毎日運行となっています。通常10:07発から15:07発まで20分毎の運行で、北海道夢れいる倶楽部が受付から運行管理までを行っています。ただし、天候などの都合で運行ができないときがあります。
北海道夢れいる倶楽部は、かつてこの江差線の存続活動をしていた会で、先に記した2013年8月2日掲載「鉄道で行くこだわり温泉-江差線湯ノ岱温泉」で、湯ノ岱温泉の休憩施設でヘッドマーク展示を担当していた会です。また、江差線の沿線にホームに似せたモニュメントで通称「天ノ川駅」を設置していたことでも知られています。このモニュメントに使われていた枕木等は、江差線廃止後に撤去のうえ、2015年12月04日掲載「北海道初の電車711系を保存している「大地のテラス」」で紹介した保存電車711系の出入口台として活用されています。

さて、その道南トロッコ鉄道の受付ですが、旧・渡島鶴岡駅の待合室を使っています。現役時代の外観はそのままに、内部を改造して、受付・案内そして記念きっぷの販売などを行っているのです。江差線現役時代に訪れたことがある人であれば、きっと懐かしく思うことでしょう。


イメージ
クリックして拡大
木古内町郷土資料館「いかりん館」にある鉄道資料室の様子。江差線関連の鉄道グッズが数多く並んでいる。
トロッコ乗車のあとは、すぐ近くにある木古内町郷土資料館「いかりん館」もぜひ見て下さい。旧鶴岡小学校の校舎を活用して2015年に開館した資料館で、昨年、北海道新幹線開業を記念して、館内に鉄道資料室「木古内と鉄道」ができました。江差線関連の鉄道グッズが約1500点も展示してあります。入場無料で、毎日9-16時に開館。休館日は毎週月曜日です。

道南トロッコ鉄道や木古内郷土資料館へは、木古内駅前にある道の駅でレンタサイクルを借りるか、木古内駅からの江差線代替バスとなる函館バス“江差木古内線”で鶴岡禅燈寺前バス停下車すぐです。ただしバスの本数は少なく、トロッコ乗車に利用できるのは、木古内発は9:21,11:24、鶴岡禅燈寺前発は12:14,14:01,17:28だけとなります。

道南へ行ったら、昼間に先週紹介した「茂辺地 北斗星広場」に行き、夜は「ながまれ海峡号」を楽しみ、翌日「道南トロッコ鉄道」に乗って鉄分を目一杯補給するというスケジュールはいかがでしょう。レンタサイクルや自動車を利用するのであれば、北海道新幹線とJR貨物が共用してきた青函トンネル前後のレールが分離する新在分岐点が見られる新幹線ビュースポットにも寄ることができます。

以上で、6回にわたって連載した道南いさりび鉄道とその沿線の見どころ紹介を終えます。


掲載日:2017年07月28日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。